会長 深田一弥の異見!

2025年1月6日

103万円の壁と178万円の攻防

 新年明けましておめでとうございます。今年は皆さんにとって良い年となりますように祈念いたします。今年こそ災害が無く、社会不安のない年となってほしいと切に感じます。

 ところで新年を迎えたものの、我が国経済はパッとしないし社会も明るさを感じられない。物価高騰の中で手取り収入は増えないし市民の購買意欲はなかなか向上せずに従って景気も良くならない。こんな状況を改善できない政治の責任は大きい。

 11月の衆議院選挙で国民民主党は「手取りを増やそう。103万円の壁を破り178万円まで非課税」と主張して選挙に勝利した。ところが財務省はそうなったら税収が年間7兆円から8兆円も減ると言って地方自治体も味方にして猛反対。そのため与党税調は123万円で手を打ちたいと決議したが、国民民主党は納得せず、結論は年を越すことになった。

 103万円の壁とは、給与収入が年間103万円までだと、先ず給与所得控除額(給与所得者の概算経費)で55万円が引かれ、さらに基礎控除(いわば最低生活費)48万円を引くと、課税所得はゼロになり税金が掛らないし、親や夫の扶養控除や配偶者控除を受けられると言うものだ。だからパートさんやアルバイトさんはそれを超えないように調整して働くので、一番人手が欲しい年末になると働く人が少なくなり困るという現象が続いていた。

 それを変えようと国民民主党は最低生活費が48万円ではいかにも低すぎるので現在の最低賃金に合わせていけば75万円上げて123万円にすべきということのようだ。これに対して与党は給与所得控除額を65万円にし、基礎控除を58万円にして123万円が妥当だとした。

 所得税の基礎控除とは、前述のように最低生活費には課税しないと言うことで設けられたと聞いている。そうすると現行の48万円はいかにも低すぎるのではないか。これは今まで放置していた政治の責任は重い。国民民主党の言う基礎控除123万円は月に10万円なので決して高いとは言えず妥当な金額だろう。

 ところで財務省が言うように果たして178万円にすると税収が7から8兆円も減るのだろうか?基礎控除を上げると実は高所得者ほど恩恵が大きい。例えば給与が年間2400万円の人だと所得税と住民税で50%になるので基礎控除が75万円上がると37.5万円も税金が下がる。こういう人を入れると7から8兆円も税収が減るのは分かる。

 しかし、基礎控除123万円にしても給与が増えるごとに基礎控除を減らして2400万円の人なら現行の48万円になるようにすれば税の減収は8兆円の半減以下になると思うが、財務省はそういうことは言わないしメディアも知らないふりをしている。もともと178万円になって恩恵を受ける層の人達は元々所得税・住民税の低い金額なのでそういう層に厚くすれば良いので税の減収額はもっと少なくなるだろう。

 財務省特に税制を作る主税局の官僚は、最も頭の良い人たちなのでこんなことはハナから分かっているだろう。どうも反対のための反対にしか思えない。国の税収に頭を痛めている彼らにとって酷な言い方かも知れないが最低生活費を48万円に抑えていたことは現状を無視した怠慢だと言われても反論できないだろう。

 年明けから国会ではこの件について与野党の間で論戦が開始されることだと思うが、低所得層から中間所得層までがよりメリットを受けられる結論となることを切に望みたい。


最近の投稿

もっと見る