トランプ関税始まる
米国のトランプ大統領が就任早々各国に相互関税を設けると公表した。未だ、第二次世界大戦中の1944年7月、米国のブレトンウッズで連合国45カ国が参加して通貨金融会議が開催された。そこでは「米国ドルを基軸とした固定為替相場制」に「1オンス35USドル」と「金兌換」によって米国ドルと各国の通貨の交換比率(為替レート)を一定に保つことによって自由貿易を発展させ、世界経済を安定させる仕組みであった。
但し、1971年のニクソンショックで金兌換と固定相場制については終焉を迎え、変動相場制になった。ブレトンウッズの場では、1930年代の世界恐慌やブロック経済が諸国の経済的対立を激化させ、その埒外となったドイツや日本が暴発したことなど、第二次世界大戦発生の一因にもなったとの反省があった。今後は関税を極力かけない自由貿易を守ろうと1948年3月24日、GATTを立ち上げた、それが後のWTOになった。また東南アジアの国々で立ち上げたTPPにも米国は積極的に参加してきた。
ところが自由貿易の下、日本や欧州各国から価値の高いドルを目指して工業製品の流入が激しくなり、米国内の生産工場が競争力を失っていった。そのため1985年にはプラザ合意で日独英仏4カ国はドルを守ろうとして日本円は一時70円台をつけるまでにもなった。その後も米国内の生産工場は、中国などの海外の人件費の低廉な国々に移行してしまい、米国内でモノ作りは益々なくなっていった。つまり、生産工場で働いていた白人労働者の行き先が少なくなってしまった。
海外で生産された生活必需品を輸入するのだから、米国はいつも貿易赤字と言うことになった。そこに目をつけたのがトランプで今まで海外の国々は安いモノを米国に売りつけて豊かになっていくのに、マーケットを提供している米国が貿易赤字なのは許せない。だから労働者たちのためにも生産工場を米国内に戻して来よう。そのためには、海外からの輸入品には高額の関税をかけて国内生産者を守ろうと言いだした。自由貿易を標榜していた米国がトランプになったら突然、それを止めようと言うのである。
しかし、トランプの言う輸入品に高額の関税をかけたら米国政府は潤うが、米国内の企業や一般消費者は高額な消費税をかけられたように高いモノを買わされるようになってしまう。また米国内の生産工場では、かなりの量の部品や原材料を海外から調達しているのでコスト高になってしまい、トランプの関税政策はとても米国のためにはならないと思う。
しかし彼がそんなに頑張るのは御用学者とも言うべき、側近のステイーブン・ミランが唱える「とんでも経済理論」を信じているからのようだ。いったん言い出したら聞かないトランプなので誰も説得できない。そんな状況下、誰かが国際市場で米国債券を売り出し始めた。そうしたら途端に米国債券の値が下がってしまい(つまり金利が上がる)困ったトランプは、あわてて関税をかけるのを90日間停止すると言い出した。
我が国はトランプ関税に対して、早々に赤沢大臣が渡米したが、なかなか関税率を下げるとは言ってくれない。日本は世界一米国債券を保有しているので、取引として、「売るぞ」と脅すのではなく、もし、米国債券が売りに出されたらいつでも日本は買い支えますと言ってはどうだろうか。我が国の外国為替特別勘定(外為特会)はうなるほど今お金がたまっているのだから。トランプは喜んで関税引き下げに応じるかも。