会長 深田一弥の異見!

2018年11月2日

重ねて軽減税率の愚を問う

 安倍首相が伸び伸びとなっていた消費税率アップを食品の軽減税率を含めて平成31年の10月から確実に実施すると宣言した。ところが、以前の消費税率アップによって消費がぐんと落ち込んだことから、消費落ち込みの緩和措置としていろいろな情報が乱れ飛んでいる。

 当初はカードで購入した人には何らかのポイントをつけるというものであったが、我が国ではカードで買い物をするのは若年層には多くなっているものの、圧倒的に現金での買い物が多い。また、店ではカードリーダーを設置しないといけなく、小規模店では難しいと思ったら、カードリーダー設置の補助金を出すなどと言っている。ところがそれでも批判が大きかったことをおもんばかってか、今度はプレミアム商品券を発行するなどと言ってさらに混乱してきている。

 ところでメディアでは今になって軽減税率が適用された場合に出てくるであろういろいろな混乱を風刺的に取り扱っている。特に、軽減税率で購入した食品をコンビニのイートインで食された場合には追加徴収するのかどうかなどかまびすしい。それを見聞きしている視聴者はなんと軽減税率とは面倒なことかとやっと気づいたようだ。基本税率の商品と軽減税率の両商品を扱う商店は混乱することは確実である。私が何年も前から「軽減税率は中小事業者泣かせだよ」と叫んでいるのに、税率が低ければよいと単純に考えてのことか反対の声はかき消されてしまった。

 よく、世界の国々でも軽減税率を導入しているのは多いのに何故日本で導入できないか?と言われるが、そういう国々でも軽減税率の商品かそうでないのかの判断で常にトラブルが出ていて決して円滑に施行されているのではないことをよく認識してほしい。また、軽減税率導入の殆どの国は基本税率が20%以上で、10%程度では軽減税率を導入していない。また軽減割合がたったの2%では、手間ばかりかかり、軽減されての効果はそれほどもないだろう。しかも軽減税率は高所得者で割と贅沢な食料品を購入する層が、軽減税率の恩恵を受けるのだから、決して低所得者優遇ではないことは私が口を酸っぱく言っている。

 しかし、軽減税率をお経のように唱えて無理矢理導入させた政党のある議員は「軽減税率というのは口当たりがよいから」と賜った。その政党を支持している事業者の多くは中小企業者なのに。そういう人たちの苦労は顧みずに、政党PRのために導入されたのではたまらない。おそらくその政党の議員たちも今となっては軽減税率を導入したことを少しは悔いているのではと思われるが。しかもその政党が、増税緩和にプレミアム商品券に賛成しているのはまさに噴飯ものだ。

 もし、プレミアム商品券を出すのであれば何も軽減税率などせずに、低所得者に対してはさらに多額のプレミアム商品券を渡せば、事業者の複数税率に対する面倒さはなくなって単純でよいのではないか?まあ、せっかく導入しようとの軽減税率なので、その政党のプライドもあるだろうから一応31年度の税制改正には入れてやり、但し、施行は税率が10%を超えるまで停止するとか何らかの措置をして当面税率は10%のみの単一税率にすること。低所得者対策としては多めのプレミアム商品券を配るようにしてはどうか?

 今般の税制改正は待ったなし。とにかく税制は複雑にせずになるべく簡素であるべきだろう。ここは国会議員諸氏の常識的対応に期待したい。


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