会長 深田一弥の異見!

2016年12月1日

配偶者控除の廃止

 今、政府税調では配偶者控除問題が論議されている。平成29年度税制改正では棚上げとし、継続審議となった。配偶者控除問題とは、103万円の壁とも言われている。妻の給与が103万円までは夫の所得税計算の際に配偶者控除が適用されるが、それを超えると配偶者控除がなくなるため妻は自らの給与を年間103万円で止めてしまうことだ。それがどういう影響があるかと言うと、パートの女性が年末の繁忙期になると年間給与が103万円を超えるのでとの理由で一斉に辞めてしまい、パート労働に頼る企業の経営者から悲鳴が上がる。やむなくそういう企業の中には本人名でなく仮名で雇ったりするが、それも税務調査で本人確認ができないと架空経費ということで否認されて課税され、さらに重加算税まで課されるので今そういうことはないだろう。

 また、この103万円の壁が女性を低所得のままに放置され、一向に女性の地位向上にならないという側面もある。それを緩和するために現行税法では配偶者特別控除という制度も設けられて103万円を超えたからといっても直ちに控除がゼロとなってしまうことはないのだが。また一般企業では扶養手当という制度はかなり無くなっているが、公務員の場合は未だ厳然としてあるのだろう。この扶養手当も配偶者が103万円を超えると無くなるというのでは税金よりももっと切実なのだろう。税務だけで無く130万円の壁と言うのもあって、これは社会保険の扶養者なるか、自分で個別に社会保険に入らなければならないのかの壁だと言う。いずれにしても当事者にとっては切実な問題ではある。

 そこで今、税調での論議では103万円を150万円にしようとか、夫婦合算課税にしようとか言われている。単に金額を上げればまたそこで壁ができてしまうし、合算課税では、今急速に増えている独身世帯との不均衡が問題となる。結婚した方が得だと結婚する人が増え少子化も少しは緩和されるのではと期待する向きもあるが、それは個別な生き方を認めている社会に逆行する考えだろう。

 ところで、そもそも配偶者控除や扶養控除とはどうしてできたのかを考えれば解決は簡単なのだ。所得税に基礎控除があるが、これは現在、前二者の控除同様38万円である。この基礎控除とは最低生活費ということだ。そのため同一世帯の所得の無い人の最低生活費も課税対象から除こうということでできたのが配偶者控除や扶養控除なのだ。と言うことは給与103万円内の妻は自分の給与からも基礎控除38万円を引き、さらに夫の所得からも配偶者控除38万円を引くという最低生活費の二重控除をしていることなのだ。こういう自分たちが得をしていることは誰も言わないのはおかしい。だから独身者からは配偶者控除廃止を言われるのだ。

 しかし、最低生活費が38万円とは今の時代いかにも低い。せめて月5万円として60万円は必要だろう。各人基礎控除60万円までは税金が掛かりません。それで配偶者控除と扶養控除は廃止して、自分の最低生活費である60万円は同一世帯の誰から差し引いても良いことにすればと思う。大抵の場合一家の主人から差し引くことになるのではないか。そうすれば夫婦世帯や独身世帯の不均衡もなくなるのだが。それでも恐らく基礎控除を上げるのには財務省は大反対するのでしょうね。


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