会長 深田一弥の異見!

2012年5月1日

軽減税率とインボイスの導入に反対する

 消費税率アップの機運が益々高まってきている。税収不足を補うには現段階では消費税の税率アップしか方法がないのは明白だ。何とか税率アップを成立させたいとの野田首相の根性も見上げたものだ。しかし、その前提条件である大胆な歳出カットを現政権も野党も示していないため国民だけでなく政権与党内にも反対がある。歳出カットの方法は色々あるが国家財政の危機なので、国・地方の議員・公務員給与を平均2割下げるべきだ。それで少なくても消費税率の2%分に当る5兆円は確実に下がる。私は人員削減しなくても外郭団体も含め給与・賞与、退職金そして年金のダウンで3%分7.5兆円は下げられると見る。これは絶対に実行して欲しい。それでもなお消費税率アップに反対するなら、それは暴論と言うものだ。

 よく、公務員の人数を削減して仕事を民間にアウトソーシングすると良い。そうすれば民間活力も出て景気が良くなると脳天気にいう人がある。それは世間を知らない机上の空論だ。公務員の首を切れば失業者を増やすし、新規採用を削減すると新卒者の就職口が減少する。一方アウトソーシングは一般に単価が低く受託企業は仕事をいくらやっても利益があまり上がらないのが実情だ。これでは景気浮揚にはならない。

 ところで消費税率を上げると低所得者が困るので食料品は軽減税率とし、それ以外の税率のみ上げると言う複数税率の意見がある。ゼロ税率も含めて複数税率を採用している国は確かにある。しかしそこで展開されているのは企業の過重負担だ。販売の際にこの商品は何%の税率なのかを判断しないといけない。しかも同一商品でも食料になると軽減税率、食料でないと通常税率その区分が大変だ。間違って少なく取っても税務署は容赦しない。カフェでドーナツを食べると嗜好品で通常税率、10個買い持ち帰ると食料品で軽減税率という笑い話もある。複数税率の国ではこのような判断で無数の裁判が行われている。現場を知らないで税制を作るとこうなる。いつも大変で割を食うのは企業の現場だ。単一税率のままで低所得者への戻し税か、給付金が良い。納税者番号制度が実施されれば可能だ。

 インボイス(取引の都度発行する税額票)制度導入の意見もある。それはいかにも税の公平性が保たれる感じがするがこれもやっかいなものだ。私が視察したドイツでは、インボイスの記載不備で仕入税額控除(企業が納付する消費税から購入時に支払った消費税を控除すること)ができないトラブルが多発している。そのため企業はそのチェック専門の担当者を置くか、税理士にチェックを依頼するなど余計な費用負担が生じている。我が国企業の殆どは帳簿を作成しているので、帳簿と元になる請求書や領収書等を完備することで所得税や法人税の計算ができ、容易に消費税も計算できる。この世界に冠たる帳簿方式は残すべきだ。企業の帳簿作成が不備な国だからこそインボイス方式を採用していることを学者もマスコミも知らないのだろう!
お隣の韓国では、何とインボイス偽造団が横行していて当局も頭を抱えているという。これは韓国に限ったことではないとの情報もある。インボイス信奉論者はこんな実状を分かっているのか?またインボイス制度になるとインボイスを発行できない零細な免税業者は流通から外される懸念が出てくることも問題だ。

 税制を語る人は机上の勉強だけでなくもっと現場の実態を見てからにして貰いたい。


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