会長 深田一弥の異見!

2012年6月25日

資本主義は社会主義に勝ったのか

 1991年12月、ゴルバチョフ首相が辞任し、連邦内の国々が独立したことにより、70年間続いた社会主義超大国家ソビエト連邦が崩壊した。1985年にそれまで軍拡競争をしていたアメリカのレーガン大統領とアイスランドのレイキャビクで会談したゴルバチョフはこのままでは既にソ連邦が持たなくなっていることを痛感し、結論に至ったと思われる。

 それから次々と旧ソ連圏から離脱する東欧諸国が増え、東西ドイツは念願の統一を果たした。これをもってマスコミは自由主義の勝利、資本主義の勝利と声高らかに喧伝した。確かに社会主義国には思想や行動の自由がなく、こと政府の気に入らない意見表明をしたり、行動をとれば即刑務所行きの恐怖政治がまかり通っていた。社会主義と言っても生産性が低いため供給が需要に追いつかず常にモノ不足で国民の不満も溜まっていた。また、多くの国民が貧困状態にも関わらず一部の高級官僚とその一族のみが富を得ていたこともあった。

 しかし、果たして資本主義の勝利と言えたのであろうか。その後ライバルの居なくなった資本主義は市場原理主義と言われるように暴走を始めた。利己的な考えが横行し、他者の迷惑も考えずに資本の論理のみで行動することを是とする極めて殺伐とした社会になった。こうした社会に対応できない旧社会主義国の民衆は、競争のないかつての社会主義体制への懐古主義が出てきたのも必然と言えよう。

 昔習った経済学を思い出すと、近代資本主義が発展してくると色々な矛盾が出てくる。特に資本家への富の偏り、益々窮乏化する労働者。これを解消するために社会主義革命が起きて、それぞれがその力に応じて労働することで生産性が高まり、しかも、分配は皆平等に行われて格差がなくなる。さらに生産性が上がると、人々は自らの欲望に応じて分け前にあずかることができて共産主義と言う理想社会になると言うものである。

 しかし、現実はロシアや中国のような資本主義が未発達の国で社会主義革命が起き、低生産性のまま国民へ富ではなく、貧困の平等分配になってしまったし、またどうせ分配が同じならなるべく楽をした方が良いとの考えが蔓延し、さらに生産性は低下していった。それで不満を言うと体制を壊す不届き者として取り締まられた。これが社会主義国破綻の実状だ。

 しかし勝利したと言われた資本主義も前述のように民衆に幸福をもたらしているとは決して言えない。社会主義はだめ、資本主義も駄目、共産主義は単なる理論でしか存在し得ないとなると、どんな経済体制があるのか?またあの時資本主義はどういう道を目指すべきだったのか?現在、資本主義の潮流の一つは経済学者ハイエクが唱えたように小さな政府で規制をできるだけ少なくすべきとの考えで、アメリカはそれに近いが、資本の論理が横行し、富の偏在が激しく、うまくいっているとは言えない。

 我が国はもう一方の潮流、経済学者ケインズが唱えた大きな政府の立場で景気刺激策をとってきたが、一般競争入札の世になったらその効果は小さく景気回復はしないまま赤字国債の膨大な累積を残す結果になった。そこに市場原理主義が入ってきて、社会には拝金利己主義が蔓延している。もし、皆が利己主義を排し他人を思いやる気持ちを持ったなら社会主義、資本主義いずれでもうまくいくのではないか。

 自分の欲望優先でのみ行動する人間が多い社会を変えないとどんな経済体制をとっても成功はない。


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