裁判所・検察庁見学ツアー
10月1日は「法の日」、全国で色々な行事がある。仙台地方裁判所は「法の日」週間行事として「裁判所・検察庁見学ツアー」を企画した。色々PRしても申込み状況が芳しくなかったのか、私の属するある団体に広報係の担当者から熱心に勧誘があった。平日の午前9時半からでもあり、40名定員に我々5名を含めてせいぜい20数名の見学者のみであった。私は幸か不幸か裁判所なるものに足を踏み入れたことがなかったので興味半分参加した。
地裁の法廷に通されて先ず「裁判員制度」の説明を受けたが意識が高いであろう参加者に必要があったのか。丁度前日隣県で裁判員制度違憲訴訟の判決が出たところだがむしろ裁判員に選ばれたらどのようなことを具体的に行うのか等を話して欲しかった。廷内を自由に見学でき、法衣を来て裁判長席に座る人も居た。放送局のテレビカメラも入り和気藹々。でも裁判官が法廷内に入ってくるドアを開けたらそれは駄目と言う。裁判官等がどこで待機してどう入ってくのかを知りたいのに。
次に仙台家庭裁判所に移動、ここでは主に少年犯罪と少年審判についての説明、その後面接室と少年審判廷見学、少年犯罪者等についてのきめ細かい配慮を強調していた。私は19歳の頃バイクで一時停止違反をして家裁に行き面接室に来たが、そういうのを犯罪少年と言うことも知った。
通りを挟んで仙台地方検察庁に行き、警察の捜査から検察庁に送致されて検察官が行う職務について説明を受けた。その後取調室見学。最近の取調べ可視化の風潮で録音・録画の設備を強調していた。取調室を一覧して驚いたのは、検察官は革張りバックレストが頭の高さまである立派な椅子、脇の事務官は流行の肘掛けバックレスト付リクライニングの洒落たメッシュチェア。その前に置いてある被疑者席はキャスターもない粗末なビニール張り4本足のパイプ椅子、後ろに控える警察官も少しだけ上等だがほぼ似たりよったりの椅子。このように威圧して取り調べをするのだろう。「被疑者の段階は未だ基本的人権は守られるべきなのにこの椅子はあまりに差別的では」と問うと。「そうですね」と返ってきたが、代えるつもりがあるのかどうか?こういうところで長時間取り調べを受けるあるいは誤認逮捕や冤罪かも知れない被疑者そして付き添いの警察官の身になって気の毒に感じた。
地裁、家裁そして検察庁も全て素晴らしい建物で内装もかなり立派である。ところでこの見学ツアーだが、対応してくれたのがどこも全て事務職員のようで、専門的なことを突っ込んだ質問や、同じ司法分野でも他のセクションのことを聞くと十分な回答を得られなかった。つまり彼らは説明要員なのだ。やはり、ここはそれぞれの部署の裁判官、少年審判員そして検事等の法曹資格者が同席すべきではと感じた。また時間配分も3カ所で約3時間もの長時間必要なのかと疑問に感じた。
因みに、もう十数年も前になるが、ドイツの州税局、税務署そして裁判所を見学した時があったが、それぞれ州税局長、税務署長そして裁判所長が自ら、当時はOHPを投影しながら丁寧な説明をし、質問にも全ててきぱきと回答していたことを思い出した。我が国では裁判官や検事はどこか世間を超越して偉い存在との印象を与えがちだが、もしかして自身もそう思っていてそういうことは事務官がすることと思っているのでは。折角の行事でもあり、彼らの意識を変えればもっと効果が上がるのにと感じた。