消費税率アップ
現野田政権は、「税と社会保障の一体改革」を目標として、その財源に消費税率のアップを何としでも成し遂げようとしている。確かに我国財政は、90兆円にも迫る歳出に対し、歳入の主であるべき税収はその半分程度。あとは赤字国債の増発で補っているのは異常事態で不健全である。税収をこれ以上挙げる為に、所得税で高所得者に負担増を強いて、相続税で資産家に負担増を求めてもそうでない人達の溜飲は下がっても増収額は極く僅かでしかない。法人税は、現状でも国際比較でさらなる税率ダウンが産業界から要望されているので無理であろう。
そうなるとやはり消費税の増収しか手がないのは明白。しかし政権与党の民主党内でも意見が一致しないし、かつて政権を担当した自民・公明の両党も民主党案に両手を挙げての賛成ではない。当然国民も頭で分かっていても実際に負担増となるのには反対となる。
その理由としては、先ず、行財政改革が殆ど進んでないことへの政府への不信と官僚への反発である。消費税のアップ分は社会福祉に使うとは言っているものの、かつての社会保険や厚生年金のように結局無駄に使われてしまうのではないかとの不信。しかも官僚は失敗の責任は全くとらない。またこれだけ財政が厳しいのに官僚側から自らの給与水準を下げようとの意見は出ずに国民にのみ負担を強いている事への反発。企業であればこれだけ厳しい財政状況なら、収益増を図るのは当然でも先ず役員をはじめ従業員も含めて給与を下げるのが当たり前の感覚である。
次に、一部の震災復興景気はあるが依然としてデフレ不況を脱却していないのにさらに増税で益々不況が悪化するとの懸念。現在、全国にある250万の中小企業の実に70%以上も赤字であり、円高もあって大企業でも3割以上が赤字と言う。政府や日銀が景気回復に本気になっていない。円高にいくら為替介入しても効果がなかったのが恐らくFRBかIMFの圧力もあったのか日銀がインフレターゲット1%を掲げて国債買入を発表した途端一転円安に振れた。要はやる気の問題であるこれで企業業績も回復し法人税収は伸びることであろう。また消費税の性質から低所得者の負担が重くなることへの恐れがある。いわゆる消費税の逆進性の問題であるが、戻し税や給付金等何らかの対策は必要である。
ところで消費税率アップの前にやることは未だある。先ず歳出減だが国・地方の議員・公務員の給与水準を最低10%、最高40%で平均20%下げること。人件費削減と言うと人員削減と新卒採用減で失業者が増え若者の就職機会を減らし自らを守ろうとするのであくまでも水準の引き下げとする。これで実に6兆円の資金が出る(外郭団体も入れるとさらに1兆円)これは消費税にすると2.5%にもなる。さらに簡易課税を原則廃止する。どうしても採用の場合は本則課税選択よりも納税額が多くなるようにする。現行のようにどちらを選択すれば有利かと言うことをなくす。さらに非課税取引の範囲を狭める。例えば社会保険診療や住宅家賃を課税にすればかなりの増収が見込める。
やってはいけないことは学者が勧めるインボイス制度と複数税率、これは一見公平のように見えても企業に事務手数の重い負担を掛けることになる。彼らの意見は実務的でない場合が多いので要注意。