会長 深田一弥の異見!

2013年1月16日

消費税の軽減税率は絶対駄目!!

 現在政府与党税調が開催されて、平成26年度の税制改正が議論されている。その中で自民党と連立を組んでいる公明党が強硬に主張しているのが、消費税を8%にアップする際、食料品等に軽減税率を設けよと言う事である。低所得者に生活必需品の税負担軽減とのもっともらしい理由が付いているが。

 しかし、消費税は間接税であるので、負担者は消費者でも納税者は事業者である。従って納税に関する事務手続は一切を事業者が負うことになる。5%から8%に税率が上がった場合、かつて3%から5%に上がった時と同様にしばらくの間は、2つの税率が並行することになり、事務手続が煩雑になる。しかし、それは一時的でしかも業務上煩雑に起こることではない。

 それが8%のアップ時に食料品等軽減税率を仮に5%にするとその事務煩雑が永久に続くこととなり、特に忙しい食料品売り場でその判断をしなければならないところでは辛い。それでも売り場に並べる前に定価ラベルを貼付してあるところはレジでの煩雑さは免れるから未だ良い。しかし、バックヤードでの作業は大変だ。力のある流通業は恐らくそれを納入業者に押しつけるところも出てくるであろう。

 さらに、今度は納付手続も大変だ。納付の際、預かった消費税から仕入等で支払った消費税額を差引くのであるが、それが常に普通税率商品か軽減税率商品かを区別しないといけない。何れにしても事務煩雑が永久に続くことになるのである。確かに消費税を負担する消費者は少しでも低い方が有り難いし、低所得者を守るためとのお題目は良いが、その負担を事業者に負わせて良いのか。それでなくても低成長時代の過当競争で利益が上げにくい中でそのような事業者のコストアップを惹起する政策は果たして国民のためであろうか?私には中小事業者いじめとしか映らない。

 また既にその兆候が出てきているが食料品以外にも色々な理由を付けて軽減税率適用を要望するところが出てくる。既に新聞協会が声を上げている。中小企業者の見方を標榜する公明党ならば一度良く考えて物事を判断して欲しい。このことは中小企業に深く関わっている税理士の私が何人かの公明党議員始め関係者に強く申し入れているが変わっていないのは、参議院選挙を前にしての票稼ぎとしか思えない。

 これは軽減税率に基本的に反対している民主党やなかなかうんと言わない自民党の方に分がある。こんな面倒な事をするなら、例えば米、魚、肉を非課税にした方が余程すっきりするがどうか?下手な軽減税率よりも余程簡単だし、事務手続もそれほどの煩雑さはない。

 他の国でも軽減税率を取っている国があるので実現可能性はあると言う人も居るが、その論の人はどれほど実状を見て言っているのか疑問だ。またそう言う国は「インボイス」制度を取っているので、日本も「インボイス」を導入すれば良いと言う人も居る。これも実状を良く識らないでの議論だ。インボイスはその整理でこれまたひどい事務手続煩雑さを招来することになってしまうのだ。小手先で低所得者のためと言いながら、食料品の軽減税率は高所得者も恩恵にあずかることを良く考えて欲しい。

 私はむしろ、高級嗜好品に高い税率を掛ける奢侈税を提案したい。例えば高級宝石や高級乗用車の消費税率を15%程度に高くすることである。それでも欲しい人は買うであろう。

 低所得者のためであれば事業者の負担とならない別な支援方法を検討すべきであろう。


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