会長 深田一弥の異見!

2017年8月8日

本当に景気は回復しているのか?

安倍内閣の改造人事が8月3日発表された。安倍一強と言われていた内閣も、森友・加計問題、適性を欠く大臣、安倍チルドレンの不祥事等、ボロが続出した。また、景気は回復していると強弁しているが、目標の消費者物価上昇2%にはなかなか届かず、日銀の黒田総裁も再延期を発表している。

私は、クライアント企業を少なくとも年1回は挨拶に出向いている。200件弱を回るので今夏は6月下旬から8月上旬まで主に宮城県内と若干隣県にも出かけた。クライアントの業績は毎月の経営情報で数値は把握できるものの、やはり経営者の話を直接聞けば一層その実態が分る。宮城県内は震災復興需要で震災後しばらくは活況を呈した。企業経営者は被災者には申し訳ないとの気持ちを抱きつつ、それでも長く続いたデフレ不況を一瞬吹き飛ばしてくれた復興需要の恩恵を享受した。しかし、震災後5年が経過し被災沿岸部の復興工事も一段落してからはまた元の状況に戻ってしまった。

そのように一時的でも復興需要のあった地域は一息つくことができたが、全国的に見れば地方の中小企業経営者の苦衷は続いている。アベノミクスは円安誘導もあり、輸出に関連したメーカーや商社、また株価上昇で金融機関等いずれも大企業は今回の決算発表を見ても軒並み業績が回復している。それだけを見れば確かにアベノミクスで景気は順調に回復しているように見える。しかし、私の知る限り、地方経済そして特に中小企業の業績は依然として厳しい状況が続いている。

今、個人の格差が言われているが、企業にもそれは当てはまり、輸出関連や金融機関等大企業とそれ以外の中小企業とで業績の2極分化が始まっている。一時期トリクルダウンと言われ、個人の富裕層の所得が増え、大企業の業績が良くなれば、屋根に降った雨が樋を伝って自然と下に落ちるように、貧困層や中小企業も潤うはずという論理であるが、それは空理空論であることが今では明白になった。

富裕層の所得が増えてもモノの購入には向かわず大抵は金融資産となってしまう。また大企業の業績が良くなるのは、主に取引企業への強い立場での価格交渉やリストラ等固定経費削減の結果である場合が多い。また、大企業の多くが上場会社なので株主が強く利益は配当に回るか、内部留保に積み上げてしまう。何れも波及効果は薄い。アベノミクスの大企業重視は、結果、地方や中小企業軽視となっており、政権与党内でも疑問を感じている議員も多い。国会は何と言っても地方から選出された議員が大半を占めている。

今回、総務大臣に就任した野田聖子議員は、明らかにアベノミクス批判論者である。今回の改造内閣には安倍政権批判のグループからは彼女だけでなく、何人かの大臣が登用された。これは従来から強気で進めてきたアベノミクスをはじめとする経済対策や安保関連、エネルギー等一連の政策の変更を模索しているのか、或いは単にポーズだけで批判勢力を閣内に入れ封じ込めようとしているのか?

地方経済が回復しないのは中小企業の業績が良くならず、圧倒的に多くの勤労者の所得が増えないためなのである。単に勝ち組企業が強くなっても勝ち組社員の懐を潤すだけであり、彼らは豊かな生活を楽しめるが、中小企業の圧倒的に数が多い負け組企業の社員は厳しい生活を強いられていることが主因と言える。今回の改造内閣が地方そして中小企業の経営が改善することができるか注視していきたい。


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