会長 深田一弥の異見!

2024年3月1日

日経平均史上最高の株高だが?

 2月23日の新聞朝刊は一面には大きく「日経平均 株 最高値」の見出しだ。22日の東京株式市場で日経平均の終値は3万9098円68銭とバブル景気の1989年12月29日に記録した終値の史上最高値3万8915円87銭を34年2カ月ぶりに更新したとのことだ。日銀の植田総裁は早速衆議院予算委員会で「(日本経済は)デフレではなくインフレの状態にある」と述べた。さらに「金融正常化の前提となる賃金・物価の好循環がこの先さらに強まる」との見通しを示した。果たしてそうだろうか?政府や経済界では、株高が企業や個人の投資や消費といった実体経済への波及効果を期待する声が出た。

 鈴木金融相は記者団から株価と生活実態に隔たりがあるとの指摘に対して「成長と分配の好循環の実現に加え、企業の稼ぐ力の強化や、物価高に負けない賃上げの実現に取り組み、生活実感の向上も図る」と強調。経団連十倉会長は「持続的な成長の実現に果敢に取り組む」とコメントした。日本百貨店協会の安田専務理事は「上場株式を保有する富裕層を中心とした消費拡大」に期待を寄せた。などとメディアは伝えている。

  今回の株高は主に外人買いによるものである。黒田日銀前総裁の金融政策の失敗により、超円安になり、輸入品が高くなってしまったことで我が国の殆どを占める中小零細企業の経営が悪化し、一般市民の生活も厳しくなった。しかし輸出企業は超円安の恩恵をフルに受けたことと、物価高でも大企業は容易に取引先や消費者に価格転嫁できるため好業績になった。外人投資家はそういう企業の好業績と超円安により日本株の割安感で好調な買いになっている。

 植田総裁の言う「インフレ」についても迂闊にはそうだと言えない。インフレには「デマンドプルインフレ」と「コストプッシュインフレ」があり、今回のインフレは明らかに後者である。そういう意味では植田総裁の言は間違いではないものの、二者何れかを明確にしないところが官僚的なズルい言い方だ。長らく続いたデフレ状態を脱して好景気になるには需要が供給を上回る「デマンドプルインフレ」であるべきなのだ。景気が良くならないままでの現在の「コストプッシュインフレ」では経済弱者である中小零細企業や一般市民いわゆる庶民の苦しさは変わらない。

 このような状態で、賃金・物価の好循環を期待するのは好業績の大企業においてのみ可能であるものの、我が国企業の実に98%を占める中小零細企業には到底無理だろう。富裕層の消費が拡大しても百貨店は業績が良くなるが。我が国の経済への効果は限定的だろう。どうも政府・日銀は大企業のことだけを見て経済を語っているようにしか思えない。

 かつての新自由主義の考えは、大企業や個人の富裕層が潤えば、雨が樋を伝って下に落ちてくるように中小企業や庶民にまで経済効果が出てくると言ういわゆる「トリクルダウン理論」を主張していたが、さすがの竹中平蔵氏もトリクルダウンはなかったと言っている。

 かつて我が国は一億総中流社会と言われていたが、それは大中小企業間、また国民間に比較的経済格差がない社会だったから景気が良くなっていたのだ。市場経済至上主義がはびこり、税制も所得税は富裕層に手厚くなり、消費税は大企業には殆ど負担がないため、益々格差を拡大している。これを是正しない限りいくら株高になったからと言って、喜んではいられない。


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