会長 深田一弥の異見!

2013年5月28日

憲法改正議論に欠けていること

 安倍政権は発足当時から政策の一つに憲法改正を掲げている。本音は、第9条の改正なのだが、ハードルが高いので、手始めに第96条の改正、つまり改正のための賛成割合の緩和から行こうとしたが、批判が多く、恐らく引っ込めるのだろう。

 しかし、憲法問題で興味深いのは、どちらかと言うと嫌米左よりの人達が「平和憲法を守ろう」と言う護憲派であるに対し、親米右よりの人達が「被占領時に米国から押しつけられた憲法なので改正しよう」という改憲派であることだ。改憲派は第9条以外にも改正したい点があるようだが、ここでは第9条について述べたい。

 第9条の文言を良く読んでみると、世界全ての国が平和主義ならその内容は当然だろう。しかし世界に平和主義の国は少数だし、我国の周辺でも、台湾(中華民国)は一応安心できるが、他は、何れも我国の領土を現に不法占拠していたり、又は奪取せんと虎視眈々と狙っている国ばかりだ。そのため、我国憲法第9条は、全くの理想論、むしろ夢想論だし、あるいは我国の危機にはどこかの国が我国にとって代わり戦う後ろ盾になるとの前提がないと成り立たない。とは言え、現憲法は自国防衛まで禁止していないとの解釈の下で自衛隊があり、相応の武器を有している。

 しかし、現憲法の下では有事の際に自衛隊が戦うには多くの制約がある。改憲派はだから改正が必要だと言う。一応もっともな意見にも見える。少し前になるが、マスコミ出身の女性国会議員が、「憲法第9条が改正されると戦争になる」と言ったので、「そういう短絡的なことを言うな!」とたしなめたことがある。それ以来、彼らの国会議員仲間達から私は「うるさい人」と敬遠された。そういう人達は軍隊嫌いで従って自衛隊嫌いのようだ。それを改憲派の人達は、世界の常識に無知な人達と軽蔑の目でみている。テレビ等で9条に関する意見主張や、議論を聞いていると常にお互いすれ違いでかみ合わない。

 私から言わせれば、改憲派も護憲派も表面的な事だけで議論しているに過ぎない。戦争は特別な人以外は誰でも嫌いだが、護憲派は何故軍隊嫌いでそれをどうしたら払拭できるのか。また改憲派はそういう人達に、かつての我国の軍国主義をどう見るのかの説明が足りない。識者の中にもかつての戦争をやむなしとする意見を持つ人が結構居るようだ。

 それで私は、何故日本は国力も低いのにあんな戦争をしたのか調べてみると、当時の政府も軍も戦争をしたくない考えが大勢だったようだ。ところが狂信的な一部中堅エリート軍人官僚達が戦争へと持って行った。彼らが右翼をバックにして、戦争に反対する者の命まで狙い、言論を封殺した。彼らの意に沿わぬ同僚を陸軍省内で白昼堂々と惨殺するようなことまでした。このような動きに軍のトップ層は制圧することも出来なかった。マスコミをも脅し戦争に反対する者は非国民という論調で政治家や官僚を押さえつけ、一部軍人官僚達による恐怖独裁政治がまかり通った。そのため良心的な政治家や官僚がこれに抗するためにどれだけ苦労したことか。その結果は、国民に多くの犠牲を強いた上で国をも滅ぼした。

 平和な今の時代でも、随所で驕慢なエリート中堅官僚による壟断がまかり通っている。憲法改正の際には余程強力な抑制装置を仕掛けておかないと軍人官僚は武器を持つだけに恐い。護憲派の人達にはそういう潜在意識があるのを改憲派の人達は良く認識した上で議論しなければならない。


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