復興予算の巨額未消化
東日本大震災の復興にかかる平成24年度の予算約10兆円の内、その35%つまり約3兆5千億円が消化されなかったと言う。新聞等の報道によると復興工事について、建設業者が主に技術者不足や資材不足により進行が遅れ、巨額のお金が余ったと言う。災害現場では被災者からいち早い復興が望まれているにも関わらず、人手不足・資材不足はいかんともし難いとのことのようだ。しかし本当にそうであろうか。
私が、地元の建設業者から聞いた話はかなり違う。震災直後の瓦礫撤去の工事は、早く片付けるとの要望もあり、結構割が良かったようだ。その利益により長年の業績低迷による繰越損失がかなり解消されたそうだ。
しかし、いざ、本格的な復興工事がはじまったら、従来どおりの一般競争入札となり、自治体から提示された予定価格ではとても利益は無理だと言う。何故なら復興工事需要の上に円安もあって資材価格や燃料代等が値上がりしていることと、さらに労賃も上がっているのに、入札予定価格にはあまり反映されていないからと言う。
そのため、その価格内で落札すれば赤字は確実のため、地元業者は誰も入札に参加しないことからいわゆる入札不調が生じた。このように入札不調の工事が続出したため、困った自治体はそれらいくつかの工事をバルクで大手ゼネコンに請負を依頼する。
依頼されたゼネコンは、当然にその価格でも受注し、自らの利益を確保した上でそれを下請けに出す。しかし、地元業者は元請けでも赤字となる工事をさらに金額が低くなる下請けには入らない。そのためゼネコンは、その金額でも引受ける業者をどこからか連れて来る。その業者は大抵の場合、地元に何らの義理もないので、受けた金額の範囲で出来る工事をする。地元業者が予定価格でも赤字になるため敬遠した工事を、ゼネコンの利益を差引いた価格で請けた工事内容は推して知るべしと言う。
いくつかの現場では既に手抜き工事が発覚している。このような状態を続けていると何年か経過して後、手抜き工事が続々と明らかになって大騒ぎになり、余計な支出を招くことになりかねないのではと懸念する。
しかも折角の被災地復興にも関わらず、地元業者が参加しないため地元経済への貢献は少ない。そんなことなら、元々の入札予定価格をもっと上げれば良いのにそれをしない。どうもかつての談合批判以来、自治体はなるべく安くというのが習慣になってしまったようだ。もし予定価格を上げて地元業者が潤えば、それを妬む地元住民のうるさ方が建設業者優遇だなどと批判するのを恐れているのか?
私が業界の団体で全国の会議に出席すると、東北は復興景気で良いでしょうと言われるが、良かったのは震災直後から1年程度で、今はこのような状況から被災地が決して復興景気で沸いていることはない。自治体は大手ゼネコンが請けて利益を出しているので、地元業者が赤字と言って請けないのは経営努力不足だと宣う。しかし、実態はこういうことなのだ。何年か経過後には泣きを見ることになるがその時は、自治体もゼネコンも責任者は既に居ないので結局その責任はうやむやにされるのであろう。
もし、資材や経費の高騰を十分加味して積算した予定価格で入札をすれば地元業者はこぞって参加し、復興工事の遅延はたちどころに解消するであろう。地元経済も潤うこととなり、それこそアベノミクスの成長戦略にも寄与することになると思うが。