会長 深田一弥の異見!

2013年5月15日

家電メーカー不振の原因

 またまた卑近な例で恐縮だが、拙宅のテレビが故障した。調べてみるともう7年も経っていた。販売店からは修理も可能だがむしろ買換えを勧められた。仮に多額の修理費を払ってもまたどこか故障するかも知れないとのことだろう。7年も経っているからそれはやむを得ないと思う。

 しかし、このテレビは自分としてはかなり奮発し、一体型の台座に大型プラズマディスプレーが組み込まれリアスピーカーサラウンドシステムが付いた、家庭用AVシステムである。当時そのメーカーが頻りに宣伝していた製品だ。これでDVDを見るとかなりの迫力なので満足していた。しかしディスプレーが故障し画面が半分しか映らなくなった。直ぐに販売店がカタログ持参でやってきた。私は、東日本大震災でも倒れなかった立派な(と自分では思っているが)従来の台座を活かして当然ここにはめ込むことができるディスプレーがあると思ったが「ない」と言う。形が全く変わっていて、全てのディスプレーに簡単な台座が付いている。現在の高さに合わせるには別売りの棚を購入して、その上に乗せると言う。そんなチャチな台座では地震でテレビが倒れてしまうと言うと、棚と台座をバンドで縛るのだと言う。何ともみっともない。テレビは故障しても、地震でも倒れなかった台座を活かしたいのは消費者として当然の考えであろう。どうしてメーカーはそこに考えが至らないのか。

 私は、今度購入のテレビを従来の台座に乗せようとそのテレビについた簡便な台座の柱をそれに合わせて伸ばそうとしたが固定されていて上下できない。つまり従来の台座の活用は無理なようだ。このテレビのメーカーは今経営不振が言われているP社である。ここでP社経営不振の原因の一つを私は理解した。もともとP社はかつてM社と言って経営の神様と言われたカリスマ経営者M氏が創業した。この経営者は、当時競合他社よりは技術は少々劣るが消費者ニーズをキャッチする能力に長けていて、それを製品づくりに活かして成功した。他社が考案した新製品をこのM社は、作業工程を徹底的に簡略化し、それより安価で売り出し、大抵の製品を売上トップにしてしまう。そのようなやり方で大きく成長した。しかし、現在は創業者名を社名から消したが、その創業者の理念まで無くしてしまったようだ。

 企業コンサルティングに「マーケットイン」と言うキーワードがあり、商品企画を徹底した消費者目線で行うことである。反対に「プロダクトアウト」と言うのは、供給者サイドに立った目線で商品企画をするので、作る側がどんなに良いと思っても消費者に受入れられなければ失敗である。正にP社のテレビは私から見れば「プロダクトアウト型」だ。私は、アフターサービスが必要な家電品はできるだけ量販店ではなく、近所の単一メーカーの中小販売店から購入している。高齢化社会にはこういう規模の家電販売店は貴重な存在だし、なるべく残っていて欲しいと思う。

 その経営者が嘆いていた。P社は一つの製品について次々と多種類を発売するが本当にこんなに種類を揃えても客は必要としないのではないかと。むしろ、私のように一部がこわれても勿体ないので他の一部はまだ使いたいと言う消費者は特に高齢者に多い。韓国メーカーの安売りに負けたと言うが、もっとフレキシブルな製品作りを心がければひょっとして経営不振を避けられたのではないか。


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