国民を舐めた解散
去る9月28日、衆議院が解散した。今回の解散は臨時国会冒頭で、解散するために国会を開いたことになった。「安倍一強」と言われ、約5年続いた第二次安倍内閣も、アベノミクスは成功していると強弁しているものの、地方や中小企業そして一般市民には景気回復の実感はなく、それに加えて首相の友人達が経営する学校法人の不祥事等もあり、政権自体の支持率は見る間に急落していた。
一方、それに対峙すべき民進党をはじめとする野党連合は支持率が伸びない上に、トップの民進党自体も組織がガタガタの状態であり、一部議員が離党するような羽目にまでなった。また東京都議会選挙で大勝した小池百合子氏率いる都民ファーストが新党を作るのではと噂されていた。そんな状況下、9月の中旬頃から安倍内閣の解散が言われていたが、自民党内の選挙巧者の人達が、反対勢力の体制が整わないうちに解散、総選挙になれば、自民党はそれほどの負けはないと踏んだのだろう。
しかし、良く考えて見れば、アベノミクスは決して成功しているとは言えず、さらなる景気対策が必要であり、国の周辺では、中国の尖閣諸島近海への侵犯は益々度を超し、また北朝鮮の狂人的な指導者のミサイルや核爆弾実験の連続など大変なはずである。それなのに国の政治空白を招く解散総選挙とは、正に野党が言うように「モリカケ隠し」だと言われてもしょうがないだろう。「国難だからこそ、国民に信を問う」とはどう逆立ちしても通る論理ではない。自分達の保身のために行う「国民を舐めた解散」と言っても過言ではない。
ところで反対勢力である民進党が代表選後間もない内に、都民ファースト率いる小池百合子都知事が今まで若狭議員や民進党を出た細野議員が新党設立準備していたのをリセットして、自分がトップとなり希望の党を設立した。いよいよ小池氏は国政に復帰するのかと思ったがそうではなく、都知事を続けながら、ということも驚いた。さらに民進党代表になったばかりの前原氏から、今回の衆議院総選挙には民進党の立候補予定者は希望の党の推薦を得ると言うことが発表され、またまた驚くこととなった。当然、それを聞いた国民は、民進党候補者は全員希望の党推薦かと思っただろうし、恐らく、候補者自身もそう思ったことは想像に難くない。
ところが、小池代表は、民進党候補者全員ではないと言い出した。つまり、憲法改正、脱原発に賛成しない候補者は排除するとのこと。民進党の議員の中には、前原始め憲法改正賛成の議員も結構居るが反対が圧倒的に多い。また脱原発も個人的に賛成でも、民進党の強力な支持団体である「連合」は電力労組があることから脱原発は正面切って言えない。先ず、憲法問題で、いわゆるリベラル派と言われる議員は外されてしまうのが明白だ。
希望の党は安倍内閣打倒が大目的であろう。そうなら、色々個別で反対の候補者も含め大同団結すれば、大きな力になるのに、入り口から選別するのでは、こぼれた候補者はむしろ反対勢力になってしまうだろう。彼女のこの一言で安倍内閣打倒のパワーは大きく減衰したと私は見た。
自民党の中も決して一枚岩ではなく、憲法改正反対も居るし、脱原発派もいるがそう言う勢力も包含しているためパワーはすごい。小池氏はそういうところも学ぶべきだろう。女性にありがちな潔癖姓が邪魔したなと思った。色々策は弄するものの、小池氏は戦略家とは言えず、戦術家でしかないと結論づけた。