会長 深田一弥の異見!

2024年7月1日

中小企業の廃業が増えている!

 今年に入り、当事務所顧問先である中小企業の廃業が増えている。コロナ後、昨年からそのような傾向は見えてきたが、今年に入り加速してきた。廃業に至った原因は様々で、業績が伸びない、後継者が居ない、超円安による材料費等の高騰に対して取引先から値上げの了解が得られない、昨年10月から始まった消費税のインボイス制度が面倒だ、昨今進んでいるデジタル化に対応できない、などであるが、経営意欲を喪失して、「もう続けていくのが嫌になった」というのが実態だ。

 我々税理士の事務所は、顧問先の中には、少数だが大手企業の子会社や関連会社などもあるが、圧倒的に多いのは中小企業である。このまま廃業が続くと顧問先がなくなるのではと心配し、全国の中小企業廃業の動向をネットで調べてみた。国の行政機関である中小企業庁の公表データは古く、2016年度までであるが1999年から17年間で中小企業の数は28%も減少している。帝国データバンクはさすがに新しく2023年の企業倒産は前年比33%増加で2024年はさらなる増加傾向になるだろうとしていて、日本の経済社会は、今大変なことになっているようだ。

 しかし、岸田政権はそんな傾向は知ってか知らずか、未だに「賃金を上げろ」などと寝ぼけたことを一つ覚えのように言っている。当事務所の顧問先企業の経営者たちは、「ふざけるな、誰でも儲かっていれば、頑張っている従業員のために、賃金は上げるよ、企業とは賃上げよりまず利益を出すのが先だろう」と怒っている。

 先日、我々税理士事務所の従業員の退職金を積み立てている共済組合の総会があり、出席した。雇用者側が従業員の退職した際のために負担している掛金なので、その運用状況がどうなっているか心配しつつの出席である。しかし、資金を運用している証券会社などの金融機関が有能なのか、極めて効率の良い運用で収益性が高いことが分かり安心した。

 総会後、その運用証券会社の社員による記念講演があった。彼はその世界では有名らしく数冊の著書も出しているようだ。彼は講演の初めに、「日本経済は緩やかに回復している」と述べた。超円安が続き、青息吐息の中小企業や、物価高で消費者の財布の紐は固く、スーパーで安いモノを探している報道ばかりがメディアでは流れているのに。私は「何が緩やかに回復しているだ!」と思ったが次に出されたスライドの映像を見せられてああそういうことかと分かった。

 講演者の彼が、「我が国全業種平均の業績を表したデータ」と言ったグラフでは確かに、ここ2、3年のデータは、収益性が緩やかに上昇している。彼は「それに比べて賃金は殆ど上がっていないことがこれで分かります」と確かに収益性のグラフの下に賃金のグラフは殆ど上がらないままである。彼は「だから、企業が賃金を上げればもっと景気は良くなります」と。岸田首相はこういうグラフを見て企業はもっと賃金を上げろと言っているのだろう。

 しかし、全業種平均とは言うものの、それは我が国企業の中の数パーセントでしかない大企業の平均なのだろう。我が国の殆どを占める中小企業のデータはそこには入っていないのだ。我々事務所従業員の退職金掛け金は、皮肉にもそういう大企業の株式運用による収益性の高さなのだ。講演が終わり、隣の席の同じ税理士に「我々の顧問している企業社会とは全く異なるな」と問いかけたら、手を挙げて「ふざけんな!」と叫びたくなっただと。


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