会長 深田一弥の異見!

2017年1月10日

グローバリズムは終焉か

 昨年末世界を驚かせたのは、当初泡沫候補と言われたトランプが共和党の大統領候補となり、さらに民主党候補クリントンがメディアの圧倒的有利との予想を覆して大統領に当選したことだ。米国で実際に選挙民と対話した体験からトランプの当選を断言していた日本人ジャーナリストも居たが。今度は世界のメディアがトランプ当選の原因追求にやっきとなり、どうもグローバリズムへの反発ではないかという結論に達したようだ。

 少し前の英国の国民投票によるEU離脱や今年行われる仏の大統領選で右翼の党首の優勢が言われ、他の欧州諸国でも反EUの政治家の台頭が言われている。EUをさらに強固にしていきたい独のメルケルもその政治基盤が揺るいでいるようだ。これも同様にグローバリズムへの反発だとしているが、何故反発があるのかをメデイアは正確に伝えていない。

 グローバリズムとは世界を統一基準で動かしていくべきとのことで当初は欧州から出てきた考えだ。例えば関税無しでの貿易はEUがそのハシリだし、英国発の国際会計基準もそうだ。しかし、最近のグローバリズムは米国からで、それは主に金融至上資本主義とも言うべきものだ。金融とはそもそも経済の潤滑油で、モノの生産と流通そして消費へと至る活動を円滑にしていく役目であり、最近はそれにサービス活動も大きな地位を占めるようになった。しかし、金融はあくまでも経済の主役ではなく、脇役であった。ところが米国発の金融至上資本主義は、金融自体の取引で利益を上げようとする。

 正月番組で見たオリバーストーン監督の映画「ウオールストリート」で強欲な金融マンのゲッコーを演じたマイケルダグラスは「アメリカの富の40%を金融が稼いでいる」と言った。モノの生産やサービスと違い、金融は付加価値を生まない。一見利益があったとしてもそれはマネーゲームで勝っただけで、それには敗者がいる。つまりマネーゲームはゼロサムで勝つか負けるかでどちらも利益と言うことはない。その世界では資金力のある方が強い。そういう金融至上資本主義が世界に蔓延するとどうなるか。

 先ず、世界の資金が集中する米国が強くなるが、米国内でその恩恵に預かれない圧倒的多数の市民が貧困化していく。金融取引には製造業、流通業そしてサービス業のように人の労働力はそれほど必要でなくキーボード操作で済んでしまう。それが生産原価はせいぜい5ドル未満の原油が100ドル近くまで跳ね上がる現象になる。

 それで産油国は利益を得るがその国の一般大衆まであまねくその恩恵に預かれる訳ではない、どんな国でも一般市民が携わるのは一次産業と製造業や流通業そしてサービス業なのだ。一部の金融関係者だけが儲かり他の者は置いてきぼりを食うことで多くの者が貧困化する。そのため当然モノは売れなくなり、製造、流通やサービス産業も不振となってしまう。グローバリズムというが実は金融至上資本主義が元凶なのだ。

 だからと言って閉鎖的な自国主義になるのでなく世界のそれぞれの国の特長を尊重して連携する国際主義は大事だし、経済活動を円滑にする金融も必要だ。グローバリズムという名の強欲なマネーゲーム主体の金融至上資本主義はもう終わりにして行くべきだろう。

 正月のNHKーBSの特集番組で東欧の経済学者と対談した米国大手金融機関のコンサルタントは、行き詰まった資本主義を解決するにはとの問いに「禅」資本主義と応えたのが印象的だった。


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