会長 深田一弥の異見!

2016年1月9日

アベノミクスはそろそろ総括すべき

 平成24年の衆議院選挙で大勝した自民党は再度安倍晋三氏を首相に垂範し、首相は経済対策を第一に掲げ、「アベノミクス」に象徴される政策を打ち出した。それは、円高デフレ不況から脱却のための三本の矢として一の矢は大胆な金融政策(2%のインフレ目標 無制限の量的緩和 円高是正)、二の矢は機動的な財政政策(大規模な公共投資 日銀買いオペで建設国債長期保有)、三の矢は民間投資を喚起する成長戦略(政策金利のマイナス化 健康長寿社会から創造される成長産業 全員参加の成長戦略 世界に勝てる若者 女性が輝く日本)である。そのアベノミクスも4年目を迎えることとなったが果たして当初の目標は達成したのだろうか?残念ながら私は否と見る。

 先ず一の矢だが、確かに円高は解消され、株式も以前の低迷を脱して日経平均2万円に迫ろうとしている。輸出企業の業績は円安を受けて順調であるし、株高は金融機関の業績を押し上げ、この両者で久しぶりの税収増となった。そのため一の矢は成功だとする見方がある。

 しかし、我が国は既に円高対応社会になっていて物価が低位で安定していた国民生活は、円安で壊されてしまい生活用品は軒並み値上がりし、価格決定権を持たない中小企業は材料高で業績が悪化した。円安が日本周辺諸国は通貨高となって輸出が伸びず、日本企業のマーケットであるアジア諸国の経済を疲弊させた。そのため円安なのに輸出数量はそれほど伸びず、輸出企業は為替差益での利益享受にとどまっている。

 また株高は土地高も招来し富裕層は恩恵を受けているが益々貧富格差を広げている。円安で輸入品が高くなり貿易収支は悪化するのが通常だが原油安に助けられたのは幸運である。こんな状態なので日銀が無制限の量的緩和をしても中小企業の設備投資意欲は湧かず、また個人の住宅ローンも増加するはずがない。

 二の矢は、大規模な公共投資とは言うものの果たして大規模に行っているのか疑わしい上に、公共工事は低い予定価格での入札で入札不調が続いていると聞いている。行政はやむなくバルク(不調に終わった工事をいくつか束ねて)でゼネコンに受注して貰うが、それから先は責任を負わないためゼネコンの下請けは総じて利益がないかあってもごく僅かである。利益無き繁栄ではいくら工事が増えても一向に景気は良くならないのだ。小渕首相が30兆円の財政支出でも景気回復しなかったのは何故か?その頃から談合批判が出てきたのを思い出して欲しい。

 何度も言うが公共工事は、関わった業者全てに利益が分配される仕組みにすれば景気は確実に回復するのだが、この時代、オンブズマン等が黙っていないだろう。その上日銀は建設国債を長期保有して紙幣を乱発すれば或いはハイパーインフレの懸念すらある。

 三の矢に至っては全く抽象的で、女性が輝く方策とは何なのか、また昨年末から言い始めた一億総活躍社会とは具体的にどんなことなのか、お題目を並べれば何とかなると思っているのか?この「異見」で26年の新年に私の述べたことが2年後の今全く時代遅れに見えないのはこの3年間を通じて一の矢の一部の効果しかなかったと言って過言でない。

 新年各所で黒田日銀総裁が賃金アップを懇請している姿は、黒田バズーカと世界から期待されたヒーローのなれの果てだし、年末の「朝まで生テレビ」で皆から攻められた竹中平蔵氏がそれでも良くなりつつあると強弁している姿が哀れであった。


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