会長 深田一弥の異見!

2013年3月18日

アベノミクスの功罪

 昨年末の衆議院議員総選挙の大勝を受けて発足した安倍政権への期待が大きい。首相就任前から景気対策を本格的に行うと宣言し、そのためには異常な円高の解消が先決として日銀に国債引き受けをさせ大胆に通貨量を増やすと言う。それにインフレターゲットを2%にしてデフレ不況を吹き飛ばすとのことである。マスコミはこれをもってかつてのアメリカのレーガン大統領の経済政策「レーガノミクス」をもじってアベノミクスと名付けて囃し立てている。

 外為市場は直ぐに反応し、あれよあれよという間に1ドル90円の半ばまで来てしまった。政権とマスコミはこれを大成功と大はしゃぎで宣伝しているがどうか。確かに、私も大胆な景気対策には日銀の国債引き受けによる通貨発行を増やすという政策には基本的に賛成で持論としても色々な場で話していた。

 但し、私の考えはこれと公共事業等の価格がセットでないとうまく行かないことである。それを従来通り自由に任せておくと正に強いモノは益々強く、持てる者は富み、持たざる者は窮乏すると言うことになりかねず、既にその兆候は見えている。円安に大きく振れたことで輸出ドライブが掛かり、輸出企業の業績は大きく改善しつつある。一方、円安は当然に輸入価格の国内高騰を招き、原油高や食料高となってきて、中小企業は材料費や維持管理費が上がり、経営に少なからず悪影響を与えている。

 また国民一般は、株式投資等金融資産や不動産投資をしている富裕層はメリットを享受しているが、ガソリンや食料品等消費財価格の高騰、公共料金の4月からの値上げラッシュなど一般庶民の生活にとっては大変厳しい状況になってきている。このままでは正に弱肉強食を是とする小泉・竹中時代に戻ってしまう懸念すら大と思う。

 そもそも自国の通貨安で喜んでいる国は世界から尊敬されない。その国の通貨が低く見られていると言うことなのだ。もっと言えば円は今、買いたたかれていると言っても過言ではない。それと円安をテコにした今後の具体的な経済対策が見えて来ない。震災復興で公共工事を大胆に増やすと言っているがそのためには原油を含む原材料調達を海外からしなければならないので外為市場はそれを先取りして円安になっているとも言える。つまり足下を見られているのだ。

 またこのままジャンジャンお札を刷りまくっていくと円は殆どが国内流通なので貨幣価値はドンドン下がり物価が急騰するハイパーインフレを招きかねない。アメリカのドルも同様にして貨幣供給量を増やしているが、ドルは世界を流通しているのでハイパーインフレにはなりにくいのだ。

 行きすぎた円安は中国や韓国を初めとするアジアの国々の通貨価値が相対的に上がることとなり、それらの国々の輸出力が弱くなってしまい、近隣諸国の窮乏化を招くことが我国にとっても決して良い結果を生まない。また円安が景気回復につながらないと益々我国の財政は厳しくなってしまう。

 かつてのレーガノミクスは確かにソ連の崩壊を手助けはしたが、軍事予算をはじめ歳出をドンドン増やした結果その後のアメリカ政府の財政赤字が膨らんで、無理な景気対策が住宅バブルを産み、結果リーマンショックと言う世界金融恐慌を招来することとなったことは衆知の事実である。つまり景気対策は円高是正のみでは終わらないこと、何より国の財政悪化を招かないよう留意することだ。

 政府もマスコミも暢気にハシャイデいる時ではない。


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