会長 深田一弥の異見!

2013年7月23日

「福島原発事故対応」の真相は?

 この件は、政治的な問題でもあり、参議院選挙が終わらないと書けなかったことである。

 福島第一原子力発電所の前所長である吉田昌郎氏が亡くなった。もしあの時そこに彼が居なかったら、原発暴走がどこまで広がったかと思うと、身を挺してそれを止めた彼の死は時の経過はあっても戦死と言って過言でない。

 あるジャーナリストのインタビューで、あの時海水注入をしなかったらどうなったのかとの問いに彼は「チェルノブイリの10倍程度の被害となったであろう」と語っている。東電も一時は福島第二への全面撤退を考えたようだ。冷却すべき水がなくなったら原子炉は際限なく温度があがり、炉心溶解を招き手がつけられない事態になる。そうなれば、放射能被害で本州は青森から東京辺りまで死の町になったかもしれない。政府も一度はそれをも覚悟し、その際発表する国民へのメッセージまで用意していたと聞く。全く背筋が凍る話しだ。

 しかし、日本の原発は殆ど海の側にあり、真水がなければ海水で冷却できる。しかし、一度海水を入れた原子炉は廃炉にするしかない。それで東電本社では海水注入に若干躊躇したと思われる。そのため官邸側の意向と称して海水注入中止を現場に求めた。しかし、吉田所長はそれを敢然として無視し、自分の判断どおりに海水注入を続けた。今になって東電では、官邸つまり当時の菅首相が海水注入を止めたと言っている。またそれを安倍首相が自らのブログに書き、それを菅元首相は名誉毀損であると訴えた。

 事実は、菅首相が当時官邸に詰めていた原子力安全委員会の斑目委員長に「海水で冷却しても再臨界は起きないのか」と問うと、斑目氏は「可能性がゼロとは言えない」と言ったので、驚いた首相は、海水注入は良く検討する必要があるのではと言った。それを受けた、当時官邸に居た東電の某社員が官邸は海水注入に反対と東電本社に伝え、それをそのまま東電本社から吉田所長に伝えたのが真相のようだ。

 これを批判された菅氏は気の毒だ。首相としては原子力の専門家から海水注入で臨界リスクがあると言われたら、それでも良いから続けろとは国民を守る立場として言えないだろう。どうも菅氏にとって、福島原発がらみでは作為的に悪者にされた感が強い。本来は東電や行政の失態なのにその多くを彼らとそれをそのまま無批判に報道した大手マスコミによって彼の責任にされてしまった。

 ベントにしても水素爆発の危険があるなら早めにベントすべきと官邸は言ったのに、東電側が逡巡している内に水素爆発を招来してしまった。それを菅首相が原発現場に来ることになったのでベントが遅れて爆発したと言われている。私の知るある理系の学者が、菅首相の判断で「フクイチ」はあの程度で収まったと言ったのを聞き色々調べてみた。すると当時のマスコミ報道には事実を歪曲していることが多いのを知った。しかし、どのマスコミも未だにそれを正そうとしてしない。

 今、亡くなった吉田所長を英雄視する報道が多い。しかし彼も本社時代には、福島第一の津波対策については消極的であったとも聞いている。彼にしてあそこまで自らの命を掛けて頑張ったのにはその悔恨の意味もあったのではないか。但し、仮にそうであってもあの時の彼の頑張りの価値を損なうものではない。

 ここは、吉田昌郎氏についてあまり騒ぐことをすべきではなく、ただ静かに彼の冥福を祈るべきであろう。


最近の投稿

もっと見る