「社長は会社を大きくするな!」は間違い!
ダイヤモンド社から出している税理士の山本憲明氏による「社長は会社を大きくするな!」の本が売れていて、氏は講演にも引っ張りだこらしい。
それを見て、直ぐに感じたのは「ああ、また税理士の縮み思考が始まった。こういう税理士は企業を育てない。不況だとマスコミも縮み思考をあおり、さらに不況を亢進させる」である。
山本税理士は、9割の起業家がやってしまう5つの失敗として(1)一気に人を増やす(通年採用などもする)(2)借金して、事業拡大を目指す(3)一等地などにオフィスを引っ越しする(4)リースなどでオフィスの設備投資をする(5)大々的な広告をする を挙げている。しかし、私は以上のことは会社を成長させる条件だと反論したい。
先ず(1)と(2)について、「人を雇うと経費が掛かりそれが赤字を呼びさらに売上を伸ばすため人を雇うと言う負のスパイラルになる」と言う。しかし、それは従業員育成に無能な経営者のことだ。企業は結局人が稼いでくれるので人を集めそれを稼ぐ集団にすれば良い。また事業拡大のチャンスを逃さないために借金をすることも必要だ。
(3)については「経営者の見栄による引っ越し」が移転費用とその後の家賃が固定費として重く、会社業績が下がると資金繰りが一気に苦しくなると言う。これも一面的な考え。私が税理士開業した際にある先輩税理士から言われた事は「一等地の地価が高いのは収益性が高いからだ。その収益性を活かすのは経営力だ」である。それを教えとして私は無理を押し一等地に事務所を構えた。起業して何時までも場末で燻っていてはやる気も萎える。
(4)についても「オフィスの見栄えを良くしたいだけで意外と使わないものです」だそうだ。しかし、いつまでも経営者一人だけの企業は別として、ないないづくしのオフィスに果たして良い人材が集まるだろうか?「人は見かけで判断してはいけない」と言うが、ビジネスの場では見かけで得をしたり、損をしたりするのも事実。初対面ではやはり見かけは大事なのだ。
(5)について「大企業が巨額の費用をかけてやるならともかく、中小企業ではそこまでの効果が得られない」と断言しているが、氏は新聞広告やテレビCMを念頭に置いているのかも知れないがそれでは広告の知識としては時代遅れ。「計画をしっかりと立ててなるべく少額から始めて下さい」と言うのに至っては噴飯ものだ。それは正に「戦力の逐次投入」と言う旧軍が米国との戦争で失敗した愚策だ。
現政権がしている景気対策も同様。やるなら多額を一気投入でこそ効果が挙がるのだ。小規模企業でも可能な効果的広告はある。例えば人目を引くデザインの大きな看板もあるしインターネットのHPやブログもある。どんなに良い製品やノウハウを持っていてもそれを如何に多くの人に知って貰わないと企業の発展はないことを山本氏は分かっていない。
氏は、要は固定費を減らせと言うことなのだろうが、企業経営者は、固定経費を掛けないとつぶれはしないが、いつまでも成長せず限界企業のままで終わりになってしまうことにも留意すべきだ。
私は、税理士会の役員をしていた時期に新規開業の若い税理士に良く言ったことは「いっぱしの顧問料を貰おうと思うなら、狭くてもなるべく一等地に事務所を構え、安くないスーツとおんぼろでない車を買うべき」である。それを忠実に守り最初に中古だがベンツを買った税理士も居た。結果は彼に聞けば分かる。