「東京2020オリンピックパラリンピック」ボランティア募集の愚
スポーツ界では2020年に東京で開催されるオリンピック・パラリンピックへの関心が日々に高まっているようだ。最近とみに強くなった男女バドミントン、先日グランドスラムを制した女子テニスの大阪選手、伝統的に強い柔道や男子体操、そして先日のアジア大会で大活躍した男女水泳や陸上の男子短距離陣など多くの競技で2020年に向けた強化策が着々と進んでいるようだ。オリンピックには競技者や役員だけでなく、世界から多くの観客が来日するであろう。それだけにホテル業界も対応に余念がないし、世論を騒がせている民泊も益々盛んにならざるをえないのであろう。
ところでオリンピック・パラリンピックの運営には、組織委員会の委員や各種スポーツ団体に所属している個人だけではとても人数が足りず、沢山のボランティアの協力なくしては成り立たないことは素人でも分かる。ボランティアの活動内容は、競技会場、選手村などの大会関係施設における観客サービス、競技運営・メディアのサポートなどである。そのボランティアの募集要項が最近発表されたが、これが驚く内容であった。
応募して欲しい人は、大会のボランティア活動に熱意がある、他を思いやる心を持ちチーム活動をしたい、オリ・パラ競技へ基本的知識を持っている、ボランティア経験者、他の言語及び手話スキルがある、などが挙げられている。しかし、人数が8万人という多さであり、とても会場周辺の住民だけでは足りず全国からかき集めなければならないだろう。
応募期間は2018年9月26日(水)~12月上旬までだが、募集に応じた個人に対して、2019年2月のオリエンテーションから2020年6月の会場別研修までの間、共通研修と役割別・リーダーシップ研修と4回も参加しなければならない。活動期間は1日8時間として10日以上、パラリンピックも希望すればさらに10日以上となる。つまり研修等の日数も含めればトータルで約1ヶ月以上拘束されることになる。
しかし、それらに参加や活動する際の交通費や宿泊費は自己負担でしかも自己手配ということだ。大会期間中の活動は滞在先から会場までの交通費が出るだけである。その交通費とは1日千円のプリペイドカードを出すことにしたようだ。ボランティアとは一般的に、自発的に他人・社会に奉仕する人または活動を指し、ボランティア活動の基本理念は、公共性、自発性、無償性、先駆性というのが一般的な理解である。例えば、震災や豪雨被害等で大変な地域を訪れてボランティア活動をするには正にその理念で多くの方々が参加して地元民のために復旧に尽力していたことは敬服に値する。しかし、オリ・パラは若干それらとは異にするのではないか。
オリ・パラは、最近とみに商業化が進んで、商標権の利用や放送権などで多額のお金が動いていて、しかもその経済効果は計り知れないと言われて居る。そういう大会へのボランティアが全く無償で良いモノなのか?会場の中心となる東京は宿泊施設が足りないのに彼らの宿泊はどうすれば良いのか。研修等だけは全国各所で行われるようだが、大会を含め遠隔地からの交通費はかなりの負担だろう。しかも期間中の3食の食事代もバカにならない。それらを全て自己負担せよとは組織委員会あまりに虫が良すぎないか?
誰かが「労働搾取」と言っていたが正に同感。今大会のボランティアには最低限の交通費、宿泊費及び食事代を支給すべきであろう。