会長 深田一弥の異見!

2012年6月5日

「日本版401k」の呼称に疑問

 公的年金の危機が叫ばれてから久しい、日本が少子高齢化に突き進んでいく中でピラミッド型の人口構成を前提としている現行制度は持たないと言われつつ、それに応える制度改革は進んでいない。その上、全国各地の厚生年金施設がバブル崩壊後殆ど二束三文で売られたように年金基金の欠損もひどい。さらに年金の記録が社会保険庁の怠惰で滅茶苦茶になっていたことも分かり、官僚の仕事とはこんなにもいい加減かと国民の怒りを招いたことは未だ記憶に新しい。

 公的年金を補う意味で作られた企業年金制度も特にバブル崩壊後その運用は厳しく、早々に清算したところやどうにも行き詰まっているところが出てきていた。さらに追い打ちを掛けたのがAIJ問題で、各企業年金基金に天下りした元厚生官僚が本人達にその意識はなかったとしても、結果として金融詐欺の片棒を担いでいたとはあきれてモノも言えない。企業年金を清算するにも厚生年金の代行部分が債務として加入していた企業の負担に残るのでまさに踏んだり蹴ったりである。

 そんな状況から金融機関が勧め始めたのが日本版401kである。401kとは、アメリカで1974年に制定され、企業福祉・企業年金全般について定めたエリサ法による従業員福祉制度の選択肢の一つで内国歳入法(Intenal Revenue Code)のsection401subsectionkつまり所得税法の規定に定められた条件を満たしている企業年金のことだ。確定給付型の公的年金や企業年金と大きく異なるのは、確定拠出型であること。つまり給付される金額が予め決まっているのではなく支払う拠出金は決まっているが給付額は運用益如何で決まると言う自己責任の強い方式である。アメリカの401kは個人拠出が原則だが、その個人が勤務している企業が上乗せ拠出もできる。

 さて日本版401kと言うのは2001年に制定された「確定拠出年金法」による年金である。その第二条第2項が「企業型年金」(厚生年金適用事業所の事業主が、単独亦は共同して実施する年金制度)、第3項が「個人型年金」(個人が自らの責任に於いて加入する年金制度)である。拠出金については我が国の所得税法においても免税措置がなされているのは同じだ。

 ところで日本版「401k」の呼称は、あくまでもこれに関わる生・損保等の金融機関の業界用語ではないのか?それを何故わざわざ一般の客へのPRの際にも使うのだろうか。ある場所でその疑問をぶつけたら、生保の担当者が言うには「確定拠出年金と言う言葉が長いのでつい401kと言ってしまうんです」と。そうは言いながら「日本版401k、401kとはアメリカの内国歳入法の401条k項の規定にある云々」と長い蘊蓄を披瀝する。同じ事でも横文字で言うとかっこいいからなのか?折角、我が国に於いて前出の「確定拠出年金法」が制定されているのだから、例えば企業型は、「2条2項型年金」また個人型は、「2条3項型年金」あるいは「2項年金」、「3項年金」でも良い。

 401kとは日本語を外国語に言い換えているのとは違う。日本はアメリカの占領地でも植民地でもないのだから、我が国に於いて何の法的効力もない外国の法律条項を敢えて言う必要は全くない。この点、業界関係者に猛省を求める。確定供出型年金に「日本版401k」でない日本語の略称を早く定めることを関係業界に強く要望する。


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