「ます」か?「ました」か?
最近よく聞く言葉で気になるのは「ありがとうございました」である。例えば、知人等へのお礼状にかつてお世話になったことについて「あの時はありがとうございました」と言うなら許せるが、当人を前にして今行ったことについても「ありがとうございます」ではなく「ありがとうございました」と言っている。
これが世間の礼儀をあまり知らない若い人が言うなら許せるが、テレビのアナウンサーも目の前のゲストに対して「ありがとうごさいました」と言っている。それを聞いた若い人たちはそれが当然だと思ってしまうのだろう。どうも年寄りには耳障りの言葉である。目の前の人には現在形で「ありがとうごさいます」というべきと思うがどうだろう。何故、たった今のことなのに過去形で「ありがとうございました」なのだろうか?
先日も我々の業界での表彰式でいつも司会が「ありがとうごさいました」と言っているので開会前に「ありがとうございます」と言えと注意したところ、かなり気にして「ました」でなく「ます」と言っていたので満足していたが、最後に来賓で挨拶に立った一流会社の年輩の役員が「ありがとうございました」とやってしまっていた。
これまた、よく聞く言葉で気になっているのは「ご参加いただきありがとうございます」ある。「参ずる」とは神社・仏閣に行くことや、目上の人に行く場合にへりくだって使う言葉であろう。だから「ご参加いただき」言うのは、いくら「頂き」と丁寧に言ったつもりだろうが、「参加」は自分が相手より上の位置に居るんだということになってしまうのだと思うがどうだろうか?本来ならば「ご出席を頂きありがとうございます」、あるいはもっと丁寧ならば「お越し賜りありがとうございます」なんだろうと思う。
ある有名住宅メーカーのコマーシャルに「〇〇の参観日」と言うのがある。かつて父兄が子弟の学校に行くことを「参観」と言ったが、未だ教師の社会的地位が高かった頃の名残だろう。だからこのコマーシャルは、まさに自社の地位が高いのだから客にその製品を見に来いと言っているようなものだろう。まさか本当にそう思っているのではないと思うが。恐らくどこぞの一流と言われる広告会社のコピーライターが意味もあまり検討しないで、口当たりの良い言葉だと思って提案したのだろう。
その住宅メーカーの社員には「それはおかしいぞ」と伝えたが、いまだに使っているところを見ると無視されたのだろう。あるいは高い金を払って作って貰った文言なので止めるのは勿体ないからかも知れない。それでも、「賛観日」としたなら「素晴らしい作品だから褒めてよ」と言っているようで少しは許せるがどうだろう。
さらに気になっている言葉は「居られる」である。「居る」は自らをへりくだって使う「参ずる」と同様「謙譲語」の部類に入ると思う。だから、「られる」と丁寧に言ったつもりだろうが、相手を尊敬して言う場合はやはり「いらっしゃる」だと思う。この「居られる」は結構、年配の人達でも平気で使っているので、今や当たり前になっているようだ。
少なくとも公共の電波を使っているテレビなどにおいては、タレントが使う言葉ならしょうがないけれど、アナウンサーなら正確な言葉遣いをして欲しいものだ。