所長 深田一弥の異見!

2020年5月8日

「原油価格」の危うさ

 先日、原油価格がマイナスになったとの報道があり、我が耳を疑った。報道内容をよく調べてみると、世界的に原油が需要よりも生産量が多くなり、だぶついた原油を備蓄する設備が不足してしまい、「お金を出すから誰か引き取ってよ!」と言うことらしい。

 我々が使う日用品で、小売価格が国際市場の変動にこんなに左右されるのは石油類だけだろう。国際原油相場の変動で、ガソリンスタンドの価格が猫の目のように変わってしまう。メーカーにもかなり備蓄があるのだから、こんなにも変わる必要があるのかなとも思えるが、その備蓄している在庫も日々価値が変動しているのだろうから損をしないためにも小売価格も上下しないといけないのだろう。

 ところで世界中で、原油取引量が多いのは、ニューヨークのマーカンタイル取引所である。ここでの取引価格が世界の原油相場を左右する。ところが、この原油相場は決して実際の需要と供給で価格が決まるものではない。いわゆる先物価格ということで、将来の生産量や需要量を予測した思惑で相場が動いている。しかも原油は世界の色々な場所で産出しているのだから、中東、インドネシア、北海、中南米、ロシア、中国などの油田から産出し、それぞれに価格が付く。

 だがその指標となるのが何とWTI(ウエストテキサスインターミディエイト-西テキサス産の中質油)で、日産50万バレル、全世界では1~2%、全米でも6%を占めるだけの原油が世界の原油の指標となるのだから恐ろしい。日本の米相場に例えると、全国で生産される米価格の指標が、南魚沼産のコシヒカリにするようなものである。その少量産出の原油だから、国際的な金余りの中では、思惑のみでどんどん値上がりし、ひどいときは1バレル100ドルを超し2008年には最高で147.27ドルも付けたことがある。最近は、40ドル程度に落ち着いていた。それがコロナウイルス騒動で世界的に需要が激減すると見て、相場が先ほど述べたようにマイナスを付けたのだ。

 ところで原油の採掘原価はと言うと、比較的コストの安い中東の砂漠からだとせいぜい1バレル5ドル未満らしい。だから10ドル以上なら輸送コスト入れても何とかコスト割れにはならない。北海では海上採掘なのでもっとコストが高いのだろう。オイルショック以来、アメリカではオイルシェールと言われる岩から原油を採掘する技術が確立したが、そのシェールオイルの採掘コストは1バレル40ドル以上だそうだ。そうすると1バレル50ドル位にならないとコスト割れになってしまう。最近の原油価格の低迷で、アメリカではシェールオイル採掘業者の倒産が伝えられている。

 そこでアメリカは産油国に対し、原油価格維持を図り、減産を呼びかけているが、原油しか、あるいは原油が主要な、財源となっている国々は言うことを聞かない。それがマイナス価格を付けるに至った原因と言える。

 ところで、モノの値段は、本来、実際の需要と供給のバランスで決まる。ところが先物相場では思惑で決まり、あまりにも変動が激しいのは、実需予想よりも、常に利益を求めて国際的に浮遊している余剰資金があり、それが例えば産出量の少ないWTIに群がり、まさにマネーゲームで値を上げたり、下げたりしている。これは以前にこの欄で書いた国際金融為替市場でも同様だ。それを演出しているのがいわゆる金融マフィアで、彼らの跋扈が、世界に貧富の格差をもたらしている元凶の一つでもある。