会長 深田一弥の異見!

2022年10月3日

汚されたTOKYO2020オリンピック

 東京オリンピック・パラリンピック組織委員会の高橋治之元理事が受託収賄容疑で逮捕されたことは最近のメディアを騒がした。オリ・パラ委員会の理事は準公務員なので、請託を受けて金品を受領すれば収賄になるとのことだ。本人にその自覚があったのだろうか?

 彼は、広告業と言うより我が国最大のイベント元請けである株式会社電通の役員時代からスポーツイベントに関わり、その道ではエキスパートと言われ、彼もそれを自認していたと聞く。その権限を行使し、各スポンサーから便宜を計った謝礼に多額の金品を受領し私服を肥やしていた。都内の一等地に豪華な邸宅を持ち高級車が何台か並ぶ映像を見ると、この維持にはかなりの収入がないと出来ないのが分かる。

 今回のオリンピックは当初からミソの付き通しだった。先ず、開催決定時の東京都知事の猪瀬直樹氏が早々に失脚し、次の桝添要一氏もそれに続いた。メイン会場となる新国立競技場はデザインコンペで、ザハ・ハディ案に決定したものの、総工費が膨大になるため計画が白紙撤回され、別な建築家の案となった。次に佐野研二郎氏デザインによる2020年東京オリンピック公式エンブレムに対して、盗作疑惑が持ち上がりこれも撤回され新たなエンブレムとなった。そんな中、日本オリンピック委員会会長竹田恆和氏に、開催招致にかかるIOC委員に対する贈賄疑惑が出て、会長だけでなく招致委員会やIOCの役員も辞任した。また東京オリ・パラ組織委員会の会長森喜朗氏は女性蔑視発言で座を去り、橋本聖子氏に交代した。

 そんな大騒動が起きて、これでは果たしてまともにオリンピック開催が出来るのかと思っていたところ、世界的にコロナウイルスが蔓延し、とてもオリンピックどころではなくなった。大会返上かと思われたが、何とIOCは、1年の延期を認めてくれた。アスリート達も固唾を飲んで、数々の不祥事を見つめていたことだろう。未だコロナ感染拡大が続いている中なので万全ではなかったが何とか滞りなく大会は開催された。

 その余韻が冷めないうちに、髙橋元理事による贈収賄疑惑が噴き出してきた。これには、兇弾に倒れた安倍晋三元首相の逝去とも関係があると思える。元々、安倍氏は首相時にTOKYO2020には力を入れていて、前回のリオデジャネイロ大会閉会時にスーパーマリオの仮装までし、世界が懸念の東日本大震災による福島原発の放射能疑惑については「アンダーコントロール」とまで強弁していたのだから。もし安倍元首相が健在だったら今回の疑惑に検察が手を付けたかどうかは疑問だ。

 そもそも以前にこの欄で述べたが、今回のオリンピックは、当時の石原慎太郎知事が自らの都政失策を糊塗するためぶち上げたのが始まりで、当初から動機が不純なのだ。だからなのかあたかも呪われたように次から次へと不祥事が起きた。スポーツは必ずしも神聖だとは言わないが、国の税金が多額投入する大会なのに、特定の企業が多額の利益を稼ぎ出し、またそれに関わる役員が私服を肥やすなどとは言語道断で、企業や役員に「使命感」が無いのかと問いたい。

 ところで、渦中の高橋治之容疑者の実弟髙橋治憲氏は、イ・アイ・イ・インターナショナル社長として、バブル期にはホテル・リゾート開発事業を中心に総資産1兆円超の企業グループを構築し、環太平洋のリゾート王と呼ばれるようになった。しかしバブル崩壊後経営破綻して、日本長期信用銀行をも破綻させた張本人である。


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