暗黒時代にするな!
7月8日金曜日お昼に驚愕するニュースが飛び込んできた。参院選挙で自民党候補者応援のために奈良市を訪れた安倍晋三元総理が路上で応援演説中、銃で撃たれたという。元総理なので当然SPも付いているし県警の警察官も多数配備されているから軽症程度済むのではと思ったが、ニュースでは「心肺停止」と言う。仮に心臓が停止しほぼ死亡が確認されても医師の診断がないと死亡とは言わないらしい。それでも何とか一命は取り留めて欲しいとの願いは叶わず、間もなく死亡との情報が流れた。
例え、憎く思っているとしても無防備な人間を問答無用で撃殺するとは卑怯の極みであり、絶対に許されるものではなく、正にテロと言うべきだ。安倍元総理がある宗教団体と繋がりがあるだろうと思って殺そうと思ったと言うが、その宗教団体のトップではなく何故安倍なのか疑問は大いに残る。
安倍元総理は、私の所属する団体が常に接触している議連の会長も務めていてかつて直接話したこともあり、いつも笑顔で穏やかに話し、個人的にシンパシーを感じていた。但し、長期政権の終わり頃になると彼の周りには色々世間を騒がせることが多すぎた。そのいくつかは彼を利用しようとする輩が起こしたことではあるが、それを国会で追及されると彼は逆ギレとも言うべき対応をして、流石にそれはまずいなと思っていた。
ところが、それらを捜査し立件するべき検察は不起訴とし、それを不服とした民間の検察審査会も無力だった。また大手メディアも当初は取り上げたものの、その後は追及することもなく、一切触れることもなくなった。また、国会で取り上げた野党も追及不足でむしろスタンドプレイに終わった感があった。これら一連の動きを見た子供達は、権力を持てば何をしても許されると思ってしまうのでは?
必ずしも彼の責任だけとは言えないものの、デフレ不況を脱することは出来ず、政権時代を通して、持てる者と持たざる者と国民の間に格差が広がり、特に貧困層に不満が渦巻いてきていることを彼はどれほど意識していただろうか?検察もメデイアも野党も無力の時、「それでは俺が正してやる」と言う輩が現れ易いことも事実だ。
今から90年以上も前の事であるが、世界不況に加えて特に東北では冷害が頻発して経済が疲弊し、農家の子女が身売りされると言うことも起きていた。一方、政権は腐敗し財閥と手を結んで汚職も頻発していた。政党政治も未熟で国会でも腐敗についてのチェック機能も働いてなかった。当然、検察も政権に阿り正常に機能してはいなかったのだろう。
そんなとき、血盟団事件が起き、政府要人や財閥の総帥が狙われるというテロが行われた。世間は腐敗を正す行動だとむしろ賛美する声も多かった。その3ヶ月後五・一五事件が起き、その対応も緩く、その4年後には二・二六事件が起きて我が国は後戻りできない軍部独裁に突っ走っていくことになる。その頃と今は違うかも知れないが、歴史は繰り返すとも言う。
現在、ロシアのウクライナ侵攻、中国の覇権主義、北朝鮮の不穏な行動があり、世間に防衛論議が喧しい。今回の安倍元総裁事件を見て、私は我が国がまた90年前の様になる懸念を禁じ得ない。検察は政権に忖度せずに法の番人、大手メディアは権力に阿ること無く批判勢力として、野党は正論を論じて国会で民意を表現する、それぞれ常に使命感を持っていて欲しい。我が国をあのような暗黒時代に絶対にしてはならない。