会長 深田一弥の異見!

2024年2月1日

インボイス制度は零細業者虐めか!

 近くに月に1、2度は必ず行く小さいが美味しい蕎麦屋がある。そこの90歳近くの女将さんは私の職業を知っているのか、先日行ったら「何ですか、あのインボイスとか言うのは、なんであんな制度を作ったのか、面倒だし必要性あるんですかね!」とまくし立てられた。

 折角の蕎麦を味わう間もなく何かは言わないといけないと「日本の消費税制度は世界にも稀な帳簿方式でそれでも十分対応できたんですよ。でも大蔵省(財務省)は消費税を導入した時からインボイスを取り入れたかったようだが、最初からそれを言うと消費税制度そのものが反対されると思ったんでしょうね。」未だ税率3%の頃だが、全国法人会総連合(全法連)では消費税率アップとインボイス導入賛成の声が強く、我々ではダメなので専門家が行って反対してきて欲しいと仙台商業界のお偉方達に請われ全法人連の税制委員会に県代表として出席した。

 委員会は各都道府県代表が出席している。会議が始まり驚いたのは、各委員から「是非、消費税率アップとその際はインボイス制度を導入して欲しい」との意見が述べられた。会議はそれで結論になりそうだったので私は初参加ではあるが手を挙げ「国の財政上消費税は大事な財源ですが、税率アップの前にすることがある、免税点が3千万円、簡易課税適用も5億円は高すぎます、国際的には免税点は大体1千万円です。それらを直すことが先では?またインボイス制度導入の声が大きいが皆さんインボイスとは何か分かっていますか?私は、ドイツの実情を見てきましたが、導入されたら、事務手数が増え、皆さんの会社では事務員さん1名増員必要です。税理士の報酬は倍になりますよ。」と声高に述べた。それ以後全法連では「インボイス導入」の声は全く聞かなくなった。

 税理士会では長年インボイス制度は免税業者である中小零細企業者が商取引から締め出される懸念があるので導入に反対の立場で主張していた。ところが最近は事業者団体の日本商工会議所や全法連からはインボイス制度導入に反対の声はなく、事業者が反対しないのに何故税理士会が反対するのだと当局から言われたらしく、税理士会も反対の主張を取り下げざるを得なかったようだ。

 インボイス制度は昨年10月から始まったが、免税業者への支払いについても当面、8割は仕入税額控除できることや、インボイス発行のためにやむなく課税事業者となった零細な事業者に納付税額を低減する制度も作られた。当局はできるだけ零細業者もインボイス制度になじませようとした努力は認める。

 しかし、実際の取引の現場ではそうはいかない。私はロータリークラブの会員だが、その理事会で理事の一人が、市内12クラブの幹事会に出席したら、大企業社員の会員が多いクラブから、クラブに支払うすべての領収書はインボイスにして欲しいという意見が出たという。

 驚いた私は、知り合いの大企業の社員に聞いたところ、実情が分かった。その企業では社員が立て替えた経費精算はAIが行っていて、インボイスでない領収書は弾かれ、自分で負担しないといけないのだと言う。つまりは免税業者の屋台、小さな居酒屋や食堂は社用で使うなということなのだろう。以前、大工さんや左官屋さんの廃業が多く、建築業界は困っているということを書いたが、そういう零細業者の事を全く無視しているのではないか?

 やはり懸念していたように零細業者は商取引から締め出されようとしている!


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