会長 深田一弥の異見!

2023年10月2日

インボイスって何だ

 今月からインボイス制度が始まる。今まで我が国の消費税では帳簿方式と言って、消費税額は請求書や領収書等の証憑書類から帳簿に記載された消費税額を元にして企業は納付すべき税額を計算することが出来た。インボイス制度とは、その請求書や領収書に登録した番号と消費税額を明示することが義務づけられる。つまり今までとはそれだけの違いなのに行政やメディアはインボイスという横文字を使うものだから、これからは請求書や領収書とは別にそういう名称の書類作成が義務づけられるのではと思われてしまう。

 また、取引先からは登録番号の連絡を要請されると、今まで免税業者として消費税について何らの用意の無かった小規模の大工・左官のような高齢の職人さんは「面倒なことはイヤなのでコレを機会に廃業しよう」と言う人達が居て、職人不足の建設業界ではパニックになっているとある地元ゼネコンの役員の方が嘆いていた。番号登録しないと消費税の免税業者は消費税分10%値引きされるのではと言う噂も広がり、厳しい業績の上さらに10%もカットされるのではとてもたまらないと、さらに廃業を選択してしまうようだ。

 インボイス制度とは、ヨーロッパはじめ世界各国で導入されている付加価値税と言われる消費税に似た税で、企業の帳簿がそれほど正確でなくてもこのインボイスがあれば自企業が売上等収入に含まれている付加価値税から負担(支払)した税額を控除(これを仕入税額控除と言う)して納付税額を計算する制度である。この仕入税額控除には証拠として取引の相手から受け取ったインボイスを必要としている。我が国消費税制は今まで仕入税額控除には請求書・領収書等の証憑書類と記載された帳簿があれば良いとされていた。

 では今までとインボイス制度となった10月1日からは何が違うのか?どうもインボイスと言われていると今までと何か別な書類が必要なのではと思わせてしまう。またそのよう思っている学者も居て、私が以前ここに書いたように誤った理解のまま新聞に意見を載せるものだから、一般の人達は益々混乱してしまう。

 何度も言うが今までと違うのは、インボイスと言う別な書類を作るのではなく、請求書や領収書等に登録した番号と消費税額を明示するだけ(消費税法では「適格請求書等」という)で良いのだ。それがインボイスである。

 また、企業が取引相手の免税業者に消費税分10%値引きすると言うことは、独占禁止法と下請法に抵触し違反となることを公正取引委員会が公表している。今月施行の消費税法には経過規定で3年間は番号登録してないいわゆる免税業者からの仕入等に係る消費税額でもその80%(消費税10%なら8%、8%なら6.4%)を控除できる。4年目から50%になるが、税理士会では80%をさらに延長するよう政府税調や各党に働きかけている。

 今まで、インボイスと言う横文字で行政やメディアが喧伝していたが何も特別な書類作成ではなくインボイス制度はそんな事なのだ。また免税業者である小規模な事業者や職人さん達が懸念していた取引先からの値引き要請は法律違反であることもはっきりした。以上のようなことを不安に駆られている小規模事業者や高齢者にも分かるようにPRすべきなのにしていないのは正に行政の不作為である。その尻馬に乗っていただけのメディアの責任も大きい。インボイスの実態を分かり易く伝える努力をメディアはしていくべきだ。


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