所長 深田一弥の異見!

2020年1月7日

映画東京裁判

 お正月、年賀状の整理も終わり、箱根駅伝の後は見るべきテレビもないので、映画「東京裁判」を鑑賞した。いつもの倍近い料金だったので「何故」と訊くと、「上映時間が約5時間」とのこと。そうかと思い覚悟を決めて劇場に入った。いつになく観客が多かったが、やはり中高年が殆どであった。よく残していたなと思える映像が多く、我が国の記録もあったが、殆どが米軍による記録フィルムだったようだ。

 この映画は1985年監督小林正樹で製作されたものを今回4Kデジタルマスター版にしたもので、映像・音声ともにクリアーで、昭和天皇の終戦詔勅は、放送で良く聞く雑音が入ったものではなく、一言一句鮮明に聞くことができた。いよいよ東京裁判の場面になったが、今まで殆ど名前でしか知らなかったA級戦犯の面々が現れて、なるほどこういう顔の人達だったのかと得心した。証人の映像もあったので、ソ連側証人で出廷した故瀬島龍三氏の弁明があるかと期待した。しかしこの映画が製作された時点で氏は健在であり、制作者が忖度して外したのではと思われ、残念であった。

 被告の弁護士は全て日本人かと思ったがさにあらずで、米国人の弁護士もいたのには驚いた。彼らへの弁護士報酬の支払いは個人だったのだろうか、それとも国の負担なのか?彼ら米国人弁護士の弁護の鋭さ激しさには驚いた。敵国人の弁護なので嫌々なのかと思ったが、全くそうではなく、「平和に対する罪、人道に対する罪と言うが、戦争は国際法で認められている国の正当行為であり、それが何故罪になるのか?もしそれが罪と言うなら広島や長崎に原子爆弾を投下して数万人の市民を殺したのは何故罪に問われないのか?そういうことをした国が果たして彼らを裁くことができるのか?」と日本人が言いたいことを堂々と主張していたのには感激した。このようなことがあったのを始めて知った。これが何故裁判速記録で日本語訳がなされなかったのか?

 裁判当初、日本人弁護士のトップ清瀬一郎弁護士が、「この裁判(極東国際軍事裁判)はいかなる根拠において実施できるのか」という質問に対しても「後から答える」とだけ述べて休廷し、その後回答することはなかった。また彼ら米国人の弁護士が「事後法で人を処罰することは出来ない」といった旨の弁論に対しても、「全ての動議を却下する。その理由は将来闡明にする」として裁判を続行させた。後から制定された法律ではそれ以前の行為は罰せられないのが司法の当然の理であり、従ってこの裁判は不当であると日米の弁護士達は堂々と述べたのだが、ウエップ裁判長は全く無視した。彼は本当に司法の専門家だったのだろうかと疑問に感じた。

 敗戦国の残虐行為は糾弾するが戦勝国の行った残虐行為は無視するというこの極東軍事裁判は司法の点では全くナンセンスで、結論が先にありきで一応裁判という形をとっただけの単なる戦勝国の戦敗国に対する報復の場に過ぎないことを理解した。しかしだからと言ってA級戦犯達が免罪になるわけではなく、やはり日本の司法の場で、きちんと裁判を行うべきで、有罪か無罪かを明確にすべきであろう。司法上の裁判と言えない場での戦勝国による報復をそのまま放置しておくことは日本国民として恥ずかしいことであろう。安倍首相に言いたいのは憲法改正を言う前にするべきことは、彼らを含む当時の戦争当事者に対する正当な裁判を行い、あの戦争のきちんとした総括をすることである。