所長 深田一弥の異見!

2021年11月24日

パーセンテージのごまかし

 先日、テレビのワイドショーで、女性評論家が、岸田政権に対して、厳しい経済状況なので正規社員になりたくてもなれず、非正規に甘んじなければならない人が多い状況を改善すべきだと言った。そうしたら、経済専門家として出ていた、一流経済研究所のコンサルタントは、「イヤ、非正規の人の多くは自分が希望してなっているんですよ」と宣う。女性評論家は「そういう人も居るかも知れないが、非正規で困っている人は多いですよ」と言ったところ、そのコンサルタントは「統計では非正規で働いている人の90%は自分で希望して時間が自由にできる非正規を選択しているんです。」と言う。「そうかなあ?」と疑う女性評論家に、「数字が正しいですよ」とたたみかけた。女性評論家はそれで黙ってしまい、司会のアナウンサーは「この問題になると感情論になりがちですね」とコンサルタントの肩を持つような発言をして次の話題に移ってしまった。

 私は、それを聞いていて「あれ!おかしいな?」と思った。コンサルタントが言った90%の数字は間違いではないのだろう。しかし、そのパーセンテージを割り出す母集団となる非正規社員数の中身はどういう人達なんだろう。例えば、子供を抱える主婦の人達ならば正規社員で時間が縛られるよりは、比較的自分の都合で働ける非正規の方が都合良いだろう。そういう人達が母集団に入っていれば、圧倒的に自己意思で非正規を選んだ人が多くなってしまうだろう。そうすると、正規社員になりたいのにやむなく非正規で甘んじている人達は10%程度になってしまうのは事実かも知れない。論者にとって都合の良い数字のマジックである。

 この場合、そのコンサルタントはそれを明確にすべきだし、それを言わなかったのは、もし意図的なら政府に阿っていてズルい論法だ。そのコンサルタントは、私が聞いていてどちらかと言えば政府側の肩を持った論調が多いようだ。女性評論家はどちらかと言えば政府に批判的な論者で有名であったことも作用しているのかも知れない。だから女性評論家は独身者の非正規社員だけなら、90%も自分の意思で非正規を選んだとは言えないだろうと反論すべきだったのではないか。

 私の周りを見ても、特に若い人達に非正規で甘んじなければならない人達は結構多いので、そのコンサルタントの主張に疑問を感じた。テレビに限らず、色々な場でもパーセンテージで話をする人が結構居る。聞いた人は何となく分かったような感じをしてしまう。しかし、そういう場合、そのパーセンテージの母数というか基礎の数値が何なのかを明確にしなければならないのに多くの場合そういうことをしない。

 また、パーセンテージでは絶対数が分からないことも多い。例えば「それは世界の人口のたった0.01%ですよ」と言われると極く少数だと思うが、80億人の0.01%なら80万人にもなる。だからパーセンテージだけでは駄目で、絶対値も合わせて出して正確に話すべきだろう。

 我が国では漸く減少してきたが、コロナワクチン接種者の報道もどこぞの国は何パーセントと言う、やはりそれは先ず人数を言って、それは人口の何十パーセントと言うべきだろう。メディアの報道でも、元々の給与ベースを言わないでベースアップが何パーセントと言うのも正確ではない。そのコンサルタントはテレビに出る機会が多く、歯切れの良い解説をするだけに極めて残念に思った。