所長 深田一弥の異見!

2021年10月2日

アフガン地獄

 8月30日、米軍がアフガニスタンから撤退した。テレビでカブール空港での実況放送を見て46年前の米軍ベトナム撤退時の混乱を思い出した。若い人達は映画「ミスサイゴン」を見ると良いだろう。19世紀から英国のインド植民地軍がアフガンにも手を出していた。しかし、第二次大戦後、独立の気運が高まり、アフガンは英国軍を一度は追放したが国内での政権争いが止まなかった。1978年ソ連の応援を得た社会主義政権が成立し世俗化を図った。

 これに反旗を翻したのはイスラム教を信仰しているムジャヒディンであった。またイスラム各国から援助を受け、義勇軍として参加する者も多く居た。この中にはサウジアラビアのオサマビンラディンも居た。イスラム原理主義が自領内に及んで来ることを危ぶんだソ連は1979年大軍団をアフガンに送った。その頃を描いたハリウッド映画が「ランボー怒りのアフガン」である。

 ムジャヒディンは米国の援助を受けて抵抗し、国連決議もあり2年後ソ連軍を撤退させた。このアフガン侵攻の失敗がソ連崩壊の引き金になったと言われている。ソ連撤退後、ムジャヒディン各派同士が覇権を巡って抗争を繰り返し、アフガン全土が内戦状態となった。その混乱の中で台頭してきたのが厳格なイスラム原理主義を標榜するタリバンで首都カブールを制圧して1996年政権を樹立した。

 しかし、旧社会主義政権派とムジャヒディンの一部が北部同盟を作り、反タリバンで抵抗する。タリバンにはオサマビンラディンが率いるイスラム主義のテロ集団アルカイーダが参加して優勢となる。2001年、同時多発テロが起き、米国は、実行がアルカイーダで首謀者はオサマビンラディンと発表した。彼は、アフガン紛争時は米軍の同志であったが、湾岸戦争時母国サウジアラビアに米軍基地が出来たのを見て聖地が冒涜されたとして反米になったという。

 米国は、アルカイーダを囲うタリバン政権に対し「不朽の自由作戦」の名の下に空爆を開始、英国も参加し北部同盟はカブールを奪還し、タリバン政権は崩壊した。国連は直ちに新政権樹立に動き、カルザイを首班に新共和国を発足させた。世界各国は我が国を含めて多額の援助を行い、アフガン復興に尽力した。2019年に殺害された日本人医師の中村哲さんが民間段階で荒廃したアフガンの地に緑を取り戻すために尽力したことは知られている。

 米軍は治安維持のためそのままアフガンに止まり、政府軍を指導援助していたが、国内各地でタリバンの勢力が拡大してきた。米国は、さらに治安悪化を防ぐため米軍の増派を行った。しかし、2020年トランプ大統領はアフガンのベトナム化を懸念してタリバンと休戦協定を結び米軍の撤退を約束した。2021年新たに米国大統領となったバイデンは2021年9月11日までに米軍完全撤退することを発表した。同年8月にはタリバンは大統領府を掌握し、共和国のガニ政権は崩壊した。アフガンはこれからタリバンによる厳格なイスラム原理主義の政治が行われることになり、国民の人権抑圧がさらに進んでいくのではと懸念されている。

 アフガンに干渉したことで、かつては英国が斜陽化の一因にもなったろうし、ソ連はアフガン侵攻が泥沼長期化し国力衰退して連邦崩壊に繋がった。次に米国もアフガンでの兵の死傷者が増加して政権を揺るがしていた。まさにアフガンは大国にとって魔の地獄地帯と言える。今、タリバン政権には中国が接近しているが果たしてどうなることか。