事務所通信

2017年2月21日

中小企業経営者のための一口メモ(18)

危機に瀕しても不安な顔を見せない
日本の中小企業メーカー創業者の多くはいわゆるたたき上げの職人さんが多い。今では大メーカーとなった、パナソニック(旧ナショナル)やホンダ(旧本田技研)を創業した、松下幸之助や本田宗一郎もたたき上げの職人さんである。

そういう創業者は自らの専門の技に自信を持ち、その腕を見込んでの取引先からの支持で業績を伸ばしてきた。またその腕を慕って従業員になる者も多かった。そういう経営者は従業員から大抵「親父さん」と呼ばれて、畏敬の念を持たれていたし、その指導の厳しさで怖がられてもいた。それでも親父さんから弟子である従業員への技術の伝承は円滑にすすみ、業界でもあそこの会社は、我々とは別格だからと言う扱いもされてくる。

やがて業界の指導者としての存在感も出てきて役職も多くなってくる。あるいはさらに業績拡大として自分は営業に専念するようになる。業界の役職も長年その業界で世話になってきたので当然でもあるし、営業に専念することは企業のトップの一番の仕事であるという経営コンサルティングの常識から見ても当然である。

しかし、ここからが大事なところで自分は製造の現場に居なくても、自分の育てた従業達が一生懸命やってくれているので大丈夫だろうと思ってしまうことである。確かに従業員達は一生懸命やっている。しかし社長が現場に居ない間に、業界の技術革新が急激に進んでいるのに旧態依然の技術に止まり、恐いトップが目を光らせないので従業員同士が仲良しクラブになってしまい切磋琢磨がされずに進歩が止まっていたということが往々にしてある。

社長は、俺が営業で頑張っている割にはどうもウチの会社の売上が伸びないなと思っても、技術は時代遅れに、作業ミスや遅れで客からのクレームでやり直しが続出と言うことになりかねない。しかし従業員はかつての栄光でプライドだけは高い。という惨憺たる状況に陥っていると言うことがままある。中小企業のトップはどんなに同業間の役職の地位が高くなっても、営業で取引先との付き合いが多くなっても。会社に帰り、1日の会社や従業員の活動(日報や報告書等)に目を配り、新たな技術習得や作業管理はどうであったかに思いを馳せる時間が必要です。これはメーカーに限らず、あらゆる業界でも共通の課題です。

要するに中小企業の経営者は現場力を常に磨いておくことが必要です。