書評

2017年10月11日

風の男 白洲次郎

  • 書籍名: 風の男 白洲次郎
  • 著 者: 青柳 恵介
  • 出版社: 新潮社

 不況が続く中で、サブプライムローン問題から始まり、原油高騰から来る資材の値上がり、食品をはじめとした生活用品の値上げ等、企業及び個人生活の不安が益々増大しています。このような事態を打開するには政治のリーダーシップが必要かつ重要となるのですが、現在の政権に託しておいて果たして我が国は良くなれるのでしょうか?

 昭和20年代、戦後の混乱期にワンマンと言われた吉田茂が首相として手腕を発揮しましたが、その片腕となって活躍した人に白州次郎と言う男が居ました。氏は終戦処理時に当時の占領軍司令部(GHQ)と堂々と渡り合って一歩も引かず、彼らをして「従順ならざる唯一の日本人」と言わしめた人です。裕福な家庭に生まれ、英国に留学して国際感覚を身につけ、しかし、日本人としての気概を少しも忘れない氏の生涯は時々マスコミの話題になりますが、現在では、どちらかと言えば骨董界で名をなした夫人の白州正子さんの方が知られているのではないでしょうか。

 氏は東北電力の初代会長となり、当時の東北各地の電源開発では山奥の現場をよく英国製ランドローバーや米国製ジープで激励して回ったと聞いています。スバルの四輪駆動車は東北電力の依頼で開発したと聞いていますので、ここにも白州氏の意図が何らか関わっているのかも知れません。今年の5月には東北電力グリーンプラザで白州次郎の回顧展が開催されました。

 敗戦によって卑屈になっていた日本人に「負けっぷりの良さ」を叫ぶ氏は、「勝ち負けは時の運」とした戦国武将の気骨にも似ています。今、経済敗戦と言われて自信を無くしている現在の日本人に泉下から喝を入れて頂きたい思いです。

 そんな理由で今回は白州正子夫人の依頼で青柳恵介氏が執筆した白州次郎語録とも言うべき「風の男 白州次郎」としました。ご高覧頂き、暑さを吹き飛ばす快哉を叫ばれるようになることを期待いたします。