書評

2017年10月11日

無私の日本人

  • 書籍名: 無私の日本人
  • 著 者: 磯田 道史
  • 出版社: 文藝春秋

映画「殿、利息でござる」は、「実は実話です」とあるように江戸時代中期の 伊達藩吉岡宿(現在の宮城県大和町吉岡)で実際にあった話です。その原本が 「無私の日本人」です。 著者の磯田道史氏はこれも映画になった「武士の家計簿」の著者ですが、その 映画を見た大和町在住の方からの連絡でこのことを知り、それに関する古文書 を読み込む内にいたく感銘を受けて書き始めたとのこと。吉岡宿の商人達が 地元が廃れてしまうとの懸念を共有して立ち上がり、伊達藩を相手に見事な 対応で宿場町を守るという痛快な話です。 最近、厳しい社会や経済情勢を反映しているのか企業の経営姿勢や個人の生き方 でも自分優先で他人の事には無関心の考え方がはびこっていますが、あの 封建時代に農村地帯の商人達が地元のためにと私財を提供して藩に貸し付け、 得た利息を全て住民に分配するとの考えには感動します。 この本には他に無私の人2名の紹介がありますので合わせてお読み頂ければと存じます。