書評

2017年10月11日

永遠の0

  • 書籍名: 永遠の0
  • 著 者: 百田 尚樹
  • 出版社: 講談社

題名から見て太平洋戦争緒戦で大活躍した我国の傑作戦闘機「零戦」を誇る本かなと思いますがそうではなく、カミカゼ特攻で亡くなった名前しか知らない祖父の実像を姉弟で追うとの小説立てになっていて当時の零戦パイロットがどう考えどう生きたかを問う本と言えます。

その内容は、単なる戦争反対でも、特攻の神聖化でもなく、その時代に彼らが本音はどう考えていたのかに迫っています。但し戦史に関わる箇所は史実と合致しています。

かつて我が国は世界を相手に戦ってきたことがあり、特に米国とはお互いに多数の戦死者も出している。ただ、根本的に違うのは、米国は、戦いといっても兵は何とか生き残ってこそ意義があるのに対し、当時の我が国軍上層部の考えが、兵はあくまでも彼らの使い捨ての駒に過ぎない。それが最初こそ戦果を挙げた特攻も、その後は全く無謀な無駄死を彼らに強いていった。その上層部の者たちの中には戦後もおめおめと生き残って政官財の重要ポストについたのも多い。このようなことは戦後払拭されたのでしょうか?

最近の社保庁の腐敗は、国民の年金として貯まったあれだけのお金を惜しげもなく無駄なハコモノに注ぎ、結局二束三文で売却しても責任は問われないことや、やっと表向きは廃止された官僚の天下り等々、自分たち選ばれし者は一般国民とは違う待遇で当然と考える思い上がりは今でも変わっていません。
この本の内容は60年以上も前の出来事ですが、今に生きる我々にも警鐘をならしているものと思わざるを得ません。