書評

2017年10月11日

日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた

  • 書籍名: 日本兵捕虜はシルクロードにオペラハウスを建てた
  • 著 者: 嶌 信彦
  • 出版社: KADOKAWA/角川書店

大東亜戦争敗戦でソ連の捕虜となった日本兵達が70年前、当時ソビエト連邦の ウズベキスタンの首都タシュケントに建設するオペラハウスの工事労働者として従事した。 ソ連の日本兵捕虜への強制労働は特に厳寒のシベリアで劣悪な条件下で十数万人が亡くなったが、 ウズベキスタンも同様であった。しかし、その集団は技術者達であったのとそれを率いた隊長の 永田行夫少佐は若干25才だったにもかかわらず、その知能と心根で建設責任者を感服させ、 極力脱落者を出さないように努力し、死亡者はごく僅かであった。日本兵達は精神的にも余裕を 得たこともあり、素晴らしいオペラハウスを建てた。1960年代の大地震でタシュケント市内の 建物が殆ど崩落した中でもそのオペラハウスは厳然と聳えていて、改めて地元民の日本兵達への 尊敬と感謝の念がわき上がったという。ウズベキスタンはソ連崩壊後独立し、初代カリモフ大統領は、 建設に従事した彼らを表敬する碑をつくる際、「日本兵は恩人なので捕虜とは書くな」と命じたと言う。 逆境にあっても毅然とリーダーシップを発揮した青年隊長そして捕虜の強制労働ながら手抜きをせず 几帳面に作業した兵達。現代の日本人に失われつつある良識を改めて感じさせられた。