書評

2017年10月11日

政宗の夢常長の現―慶長使節四百年

  • 書籍名: 政宗の夢常長の現―慶長使節四百年
  • 著 者: 濱田直嗣
  • 出版社: 河北新報出版センター

1613年、スペイン技術者指導の下、伊達藩で造った船「サン・ファン・バウティスタ号」で 日本の奥州王を名乗り伊達政宗は家臣の支倉常長を大使としローマ教皇と スペイン国王に貿易と宣教師派遣を依頼する使節を派遣した。 滞欧中に徳川幕府は切支丹禁止令と鎖国をしたため、 常長は失意の内に帰国し、それに伴う資料はあまり残っていない。 何故、政宗はこのように壮大な決断をしたのかは現在では推測の域を脱しないが、 濱田氏は、東日本大震災と同規模の1611年に起こった 慶長大津波による被災地復興の一助に南蛮貿易をと考えたのではと述べる。 伊達藩に慶長大津波の資料は全くと言って残っていない。 もし伊達家がこの被災を詳細に記録していれば丁度400年後、 つまり2011年の大被害もかなり避けられたのでは。 しかし戦乱の世がようやく一段落した当時としてはそれもやむを得ないことだったのかも知れない。

是非、400年前、未曾有の大被災にも関わらず果敢に欧州へ飛躍しようとした 伊達政宗とそれに応えようと挑んだ家臣支倉常長に想いを馳せて頂きたい。