宮大工棟梁・西岡常一「口伝」の重み
日本人は、長年掛けて生活経験からの工夫等で、素晴らしいモノ作り文化をつくりあげて来ました。それを支えたのが職人です。今、技術力で世界に冠たるメーカーも元々は職人の技術をベースにしている企業は数多くあると言えます。また、職人的な習熟は決してメーカーだけでなく、建設や流通の分野、はたまた事務管理にまで及んでいます。つまり我が国は職人文化と行っても過言ではないと思います。
今回、ご紹介する本は、法隆寺や薬師寺の修理に関わり、不世出の宮大工棟梁と言われた故西岡常一氏が生前、日本経済新聞の「私の履歴書」掲載された原稿をベースに「西岡常一棟梁の遺徳を語り継ぐ会」が監修しています。
その内容は、建築物に使われている建材と技術について千年の重みとそれに新しさを対応させていく超職人である西岡棟梁の苦労が書かれています。
修理に際して、鉄骨を使うべきと指示する一流の学者達に、断固として木を使うべきと主張するところは木を愛し、木を良く知っている経験から来る自信なのでしょう。法隆寺の千三百年の経った檜の垂木が、修理に際して屋根瓦等を下ろすと重みで垂れ下がっていたのが除々に元に戻ってくる様子の描写は感激します。
そのような西岡棟梁の、生まれ、育った環境、一人前の宮大工に至るまでの修行時代、そして棟梁として工事を主宰する際の苦労が自伝として書かれ、また、法隆寺管長を初め学者、弟子等が尊敬の念を持って彼を偲ぶ文を寄せています。