書評

2017年10月11日

仙台平野の歴史津波 巨大津波が仙台平野を襲う!

  • 書籍名: 仙台平野の歴史津波 巨大津波が仙台平野を襲う!
  • 著 者: 飯沼勇義
  • 出版社: 本田印刷株式会社

3月11日の大震災は、激しい揺れに巨大津波そして原発事故と未曾有の大惨事となりました。特に今まで津波は平野部には来ないと思われていたことが被害を大きくしたと言えます。この度の震災は本当に予知不可能の想定外の出来事だったのでしょうか?  

実は平成6年と7年、藤井仙台市長と浅野宮城県知事に、来たるべき巨大津波に備えるための防災対策について「陳情書」と「津波防災対策への提案」を出した郷土歴史研究家が居ました。しかし地震や津波の専門家でもなく組織にも属さない市井の一歴史研究者の意見は無視されたのでしょう。同年にその研究資料を「仙台平野の歴史津波(巨大津波が仙台平野を襲う!)」として単行本を刊行しました。これも一部の人の手に渡ったのみと言えます。

今般、東日本大震災を期に地元印刷業者がその復刻本を作成しました。私はそれを読み、まさに頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けました。この本を16年前に読んでいたら、そして行政がその対策をしていたら、これほどの悲惨な事にはならなかったのではないか?と。つまり、仙台平野に津波は来ないというのは後世の人の勘違いで、かつてそこは幾多の津波に襲われていたと言うことがこの本で初めて識りました。

しかし、日本人の良い点でもあるが悪いクセの「嫌なことは忘れる、悪いことは水に流す」の習性が、そういうマイナスの歴史を残さなかったこと。それが被災の歴史の積み重ねが全くないことで後世に伝えられずにこのような惨状に至ったと確信しました。これを機に、この惨状を歴史の事実として後世に残すべきで今回のこの復刻本を皆様の常備品として手元に置いて頂くことを念願します。